今日も徒然、中洲日記

ほどほどに映画が好き。ほどほどに食べることが好き。日々気づいた事を綴ります。

ヒトラーを欺いた黄色い星


ナチス政権下で、ヒトラーの意のままに虐殺された多くのユダヤ人。ホロコーストの現実は、戦後70年を過ぎた今でも、新たな事実が掘り起こされ、世界各地で映画化され、世に問われている。


そんな中の1つの映画として、本作がある。


今まで観てユダヤ人関連の映画とは少し視点の違う本作。


当時、ユダヤ人たちは胸に黄色い星を付けることを強要され、ヨーロッパ各地で、住まいを追われ、収容所に強制的に送り込まれていた。その地で、ガス室に送られたり、酷い生活環境から病気になったりしてあまりに多くのユダヤ人が命を落とした。


本作に登場するのは、全てのユダヤ人を移送したと発表された後のベルリンに終戦まで留まり、生きながらえた4人のユダヤ人たち。


彼らは、どうやって生き延びたのか。再現したドラマ部分と後年実際に当時の様子を証言したドキュメンタリー部分とを構成した映画。


それぞれに普通の生活があったベルリン。日に日にユダヤ人たちが生きにくくなっていく日常。早々とよそへ逃げ出すことなどできなかったはずだ。みな、家族や仕事があったのだから。


そして、突然にその時は訪れる。一軒一軒、ナチの兵士たちがユダヤ人たちを追い立て、引っ立てる。ただ、言われるがままにトラックに乗せられ、さらにそれぞれが割り振られた収容所へ送られる。


その過程で、4人は自らの機転や人々の善意で、ナチの網の目からすり抜ける。ギリギリの選択と運が働いたのはよく分かった。


彼らを匿った善意の人々も厳しい統制下で最後まで守り切れない人々もいた。しかし、それを責めることはできない。最初の救いの手を差し伸べる勇気を持っていた人たちだ。


厳しい状況下で終戦を迎え、晴れて自由になった時に彼らは知る。自分たち以外の多くの人々の悲しい結末を。


追い詰められ、何度も命の危機にありながら、最後の最後で救われた彼ら。そこには自分の力だけでなく、多くの人々の支えがあったことも。


こうして、生き延びた人たちが口を開くことで、また新たな「あの時」が見えてくる。


重い内容ではあったが、観ておいて良かった。