今日も徒然、中洲日記

ほどほどに映画が好き。ほどほどに食べることが好き。日々気づいた事を綴ります。

残された者 −北の極地−


マッツ・ミケルセン主演映画なのに、都内での上映館が少なすぎるだろ〜(怒)。Tジョイ系列しか上映してないので、初めてのTジョイPRINCE品川に行ってみた。バルト9でも良かったんだけど、席の埋まりは新宿の方が速かったので、品川にチャレンジ。


普段から品川には行かないので、不案内。映画館は駅前だと聞いていたが、地図アプリのお世話になりながら到着(汗)。映画館入口前の最後の上り坂がちょっとイヤ(汗)だけど、なかなか快適な映画館だった。


スクリーン内も前の席との間がたっぷり取ってあり、足を伸ばして鑑賞出来る。スクリーンに向かって席の並びは一直線ではなく、外側には見やすいように角度がついてる。


上映スケジュールによっては利用しやすい劇場かも…


さて、本編。


まずオープニングからマッツさんは雪かきをしている。遥か先まで見渡せる雪原に動く姿はマッツさんのみ。ゴツゴツとした岩のような地面が覗くまで雪をかいて前進する。


彼がなぜそこにいるのか…一切の説明も回想シーンも無いままに話は始まるのだ。


そんなシーンを見つめていると突然アラーム音が鳴り始めた。「誰だ?」とまわりをキョロキョロ見回してみても、誰も慌てる様子が無い。その音はスクリーンで鳴ってたのだ。


一面雪の平原で1人生きるマッツさんは時間の管理を徹底して、アラーム音が鳴る度に時計を確認し、次の作業に移動する。


明らかに不時着した思われる小型の飛行機を寝蔵にマッツさんはたった1人で生き抜こうとしている。そのための時間管理だ。毎日のルーティンワークを正確にこなしていくことで、孤独に負けない自分をギリギリのところで維持している。


こうした作業の1つが雪かきだったのだ。マッツさんは雪原に大きく「SOS」を書いていたのだ。


終わりの見えない孤独と極限の寒さ。それでも、彼は飛行機内に残された様々な物を創意工夫して道具をこしらえる。分厚い氷をかいて、穴を空け、魚を釣る。ルーティンワークの一環で無線機を持って盆地の先の高台から無線通信にチャレンジする。


おそらく同乗者もいたのだろうが、不時着後、1人生き残った主人公はどこで気持ちを転換できたのか?サバイバルの知識もあったように思うが、それも孤独に生き抜くことに役立ったはすだが…


そんな彼に突然希望が降ってくる。ヘリコプターの音が聞こえてきたのだ。明らかに彼の捜索をしている。ようやく過酷な日常が終わる。ところが…


自分1人だった生活に助けるべき人が1人加わる。腹に大きなゲガを負った女性は意識朦朧としており、マッツさんが世話をしなければ命は潰える。


はたして、マッツさんのように1人でも生き抜くのでさえ厳しい過酷な状況下で、瀕死の重症で言葉も通じない目の前の1人に手を差し伸べることはできるだろうか。


お荷物となっている彼女を放置すれば彼は助かるかもしれない…いよいよ心が折れそうになった時、そんな彼の思いを見越したかのように彼は雪渓を踏み抜いてしまう。こんなところもズシリと来る。


安全な盆地の飛行機の中でいつ来るかしれない救助隊を待ち続けた日々。彼の心には毎日の生活をギリギリで支えるタフな心があった。そこに変化が訪れた時、その人の本性がはっきりとする。そういう映画だった。


ラスト。。。絶望に打ち砕かれたマッツさんのお顔の後ろに「希望」が形になって姿を見せる。はたして、間に合うのか…本当の希望になってほしい。そんな祈るような思いでエンドロールに。


ボキャブラリーの底の浅さが露見してしまうけど、ホントに凄い映画だった。何度も何度も打ち砕かれる希望をこれでもかこれでもかと見せられる98分。見事だと思った。私も映画の世界に入り込んでしまい、マッツさんの絶望を自分のことのように感じてしまう。


なにより凄いのはキャストの数。たった3人。1人は登場した時には死んでいてほぼ雪に埋まって、誰だが分からない。もう1人は瀕死の重症を負い、ずっと寝ており言葉はたった一言「ハロー」のみ。そして、マッツ・ミケルセン


舞台の芝居によく一人芝居というのがあるけれど、映画では珍しい。ある意味、極限の地で身も凍るような疑似体験にも似た鑑賞が出来たのは、この主な登場人物が1人というシチュエーションのおかげかと思う。


上映館が少なくて残念だけど、絶対観たほうが良い映画だ。