お母さんが、死を前に身辺整理を始め、その覚悟を示す映画だと思って劇場へ…
もう少し、話の筋をきちんと理解して劇場に行けば良かったな…
ショックが大きかった…
年老いた母親は、1人できちんと暮らしている。
隣に人生の友として、頼りになる友人が暮らしているが、基本的には自立した生活を送っている。
年老いた時の生活ぶりとしては、理想に近いのではないか…
そんな母親の元に息子が帰ってくる。
薬の所持で18ヵ月の服役を終えた48歳の息子。
出所直後とはいえ、自らを律した生活を送る母親と比べ、なんともだらしなさが目につく中年の息子。
そのなんとかせぇ〜よって言いたくなるような息子は、新たな生活で、心惹かれる女性と出会う。
だけど…彼は…
以前のことを問う女性に頑なに答えを拒み、結局別な道を行くことになる。不器用というのか、なんというのか…
きっとこんな頑なさは母親譲りなんだろうなぁ。
なぜかと言えば、腫瘍が見つかり、余命に限りがあることが分かった母親が自ら選んだのは、前向きな治療でもなく、後ろ向きな自暴自棄でもなく、尊厳死だったから…
自分として、しっかりと自身を律することが出来るうちに旅立とうという明確な意思表示…
形こそ違えども、母親譲りの頑なさを持ち合わせている息子は、その選択に動揺し、母親と向き合うことが出来ず、隣の家へ逃げ出す。
愛犬の病気がきっかけで家に戻った息子。
そして、息子はいつもと変わらない日常の中で、母親の選択をただ見送る。
尊厳死を迎えるための施設への道…スクリーンには車から望める空が映し出される…
そして、母は淡々とその時を迎え、最後に息子に「愛している」と伝える。
それまで、母親の為すことをただ見つめていた息子が母親を抱きしめ、初めて激しい感情を見せるのだけど、母親はちゃんとそれを見届けられたろうか…
年老いた母親と独り者の中年の息子。
言葉少ない2人の生活。
スクリーンに映るのは、あまりに淡々と静かに刻まれる2人の時間。
ラストで、その時間に強引な終止符が打たれ、観てる者には大きなショックが残される。
確かに病気で苦しむのは嫌だけど、そのことで家族に迷惑をかけるのは嫌だけど、こういう選択で良いのか…
これからの時代、日本でもこういう選択が可能になったら、自分はどうするのかと問われてるような…
エンドロールをぼんやりと眺め、場内に灯りが点いても、しばらく動けなかった。