今日も徒然、中洲日記

ほどほどに映画が好き。ほどほどに食べることが好き。日々気づいた事を綴ります。

ユダヤ人を救った動物園 アントニーナが愛した命


主演のジェシカ・チャステインは、どちらかというシビアな世界で戦うシャープな女性のイメージがあったけど、こういう普通の奥様の役も似合うのね。


まだ戦争前のワルシャワで幸せに動物たちと暮らす主人公。明るく動物たちと接する彼女の姿は、本当に動物を愛してるのだなぁと伝わってくる。


しかし、そんな幸せな日々も長くは続かない。ドイツ軍の爆撃で人々に愛された動物のほとんどが死んでしまう。


主人公は父親を早くに亡くした。それは彼女を人間不信にするに十分な出来事だった。だからこそ、動物に愛を傾けていったに違いない。


ドイツ軍がワルシャワを制圧し、ポーランド自体がドイツ軍に屈した中で、次の標的はユダヤ人となっていく。


夫は子どもの頃から身近に多種多様な人々がいた。ユダヤ人だからとか他国からの移民だからと考えて付き合ってきたわけではない。ただ、苦境にある友を救いたい。その一心で、ゲットーに入り込む手段を得て、人目に付かぬよう少しずつユダヤ人たちを連れ出し、動物園に匿いながら、逃がしていく。


よく知る親しい友人を匿うのとは違う。先行きに不安を感じる主人公だが、夫の信念に寄り添い、家を空けることの多い夫に代わり体を張って、ユダヤ人を守り通す。


彼ら夫婦の交渉の末、動物園はなんとか形を残し、養豚場として動いていくのだが、ドイツ軍の目が張り付き、しかも、彼女に気のあるドイツ軍の動物学者が頻繁に訪ねて来るようになる。彼女はユダヤ人たちを守るために彼と親しくする。だが、それを見た夫との間で諍いに。彼女が必死で隠れ家を守ったことを夫はどれほど理解していたのか。


嫌悪感さえ抱くドイツ軍の動物学者に手を握られたりすることがどれほど屈辱的だったか。これも多くの命を守るためだ。それを夫は外の世界の厳しさを知らないと妻をなじる。男って勝手だねぇ。。。


しかし、これ、実話らしいので、こうした辺りの証言もご夫婦はちゃんとしたんだろうな。立派な人たちだ。だからこその行動だったんだろう。


迫り来る恐怖の中で、しっかりと胸を張り、多くの人を守り切った主人公の勇気と強さに圧倒される。


ラストはとても幸せな結びでホッとした。厳しい時代に互いに助け合った人々が肩を寄せ合い、新しい暮らしを始める。それはとても素晴らしい光景だった。


大戦を描くものとしてはずいぶんと淡々と進んでいくが、それこそが実話の持つ重みというやつなのだろうなぁ。