今日も徒然、中洲日記

ほどほどに映画が好き。ほどほどに食べることが好き。日々気づいた事を綴ります。

デトロイト


あの「ハートロッカー」のキャスリン・ビグロー監督の新作。試写にて一足先に鑑賞。


ドキュメンタリーかと思うほどの緊張感。デトロイトで実際に起きた白人警察官による黒人青年射殺事件の顛末を画く。


今でも、人種差別に端を発した様々なトラブルが報道されているが、舞台となった時代はもっともっと厳しい状況だった。


街は白人と黒人の生活エリアが区分され、過密で環境の悪い場所に黒人たちは押し込められていた。さらに、白人の規範による取り締まりが行われ、彼らは何かと言えば目の敵にされる状況にあった。


そんな中、深夜の無届けのパーティに警察の取締りが入る。大勢の黒人を連行する姿を見られると関係ない黒人達まで刺激してしまう。店の裏口から連行しようと計画していた警察だが、その裏口が使えず、黒人街の真ん中で、衆人環視の中、何台もの警察車両を連ねることになる。


この出来事がそもそもの発端のように画かれ、ここから、人々の日頃の不満が爆発し、デモや暴動、略奪に繋がっていく。


デトロイト警察が主導する暴動への対策。そこに州兵や郡警察も投入されていく。現場の街を知り、暴動鎮圧の指揮を執るのはあくまでもデトロイト警察。


地元警察と日頃からソリが合わない地元民。互いへの不満がより加速して激しく厳しい取締りへと突き進んでいく。


しかも、白人vs黒人という対立軸に他所から派遣されてきた郡警察達は直接の関わりを拒み、現場を離れていく。


暴動鎮圧のために通りに並ぶ警官達に届いた発砲音。誰も撃たれてなどいない。だが、互いの疑心暗鬼の高まりはその音だけで、最悪の状況に突き進むのに十分だった。


冷静な判断を欠いた警官の行動。近くで警備員をしていたために間に入った黒人青年。無実の罪で、命を奪われた黒人青年たち。


紆余曲折を経て、事件は裁判に委ねられる。確かにうやむやにされなかっただけでも進歩なのかもしれないけど、裁判は正義を執行する場所ではなかった。


実話ベースだけに、ドラマチックに「正義」が明らかになることはない。結末はなんともうやむやで、スッキリと解決しないで、消化不良ではあるが、これが当時の「現実」であったと。。。


これを白人の女性監督が撮ったことに大きな意義があるのかな。事件に関係した人々の証言や記憶、さらに様々な記録を元に製作されたとラストに字幕が出る。


歴史の記録。映画にはそんな役割もあるのだと強く感じる映画だ。