今日も徒然、中洲日記

ほどほどに映画が好き。ほどほどに食べることが好き。日々気づいた事を綴ります。

スリー・ビルボード


アカデミー賞ノミネート作品等の報道が伝えられている今日この頃、ずっと以前に公開された「ダンケルク」を別にすれば、ノミネートされた作品群の中では公開が早い。


アカデミー賞の下馬評や前哨戦での結果が日本の公開時期を微妙に変化させる。去年の「ムーンライト」のように。その点では、こうして、早めに公開された方がゆっくり観られる。


受賞した暁にはチケット取れなくなって大変だもの。。。と言うことで、公開初日に場内1/3ほど埋まったスクリーンで鑑賞。


「ファーゴ」の監督が、女性警官で出演した女優さんを主演に描く。舞台はコミニティが狭く小さな田舎町。7ヶ月前レイプされた挙げ句、火を放たれて殺された娘の母親が、一向に進まない捜査の状況に業を煮やして、起こした行動が、町に波紋を投げかける。


町の人間でも滅多に通らない忘れ去られた田舎道に3つのビルボードが立っている。最後のオムツの広告は風雨にさらされ、今や何があったかさえ分からないほど朽ち果てている。


そのビルボードに広告を掲載する主人公。犠牲となった娘の名前こそ出していないが、狭い町で「7ヶ月前のレイプ殺人」と言えば、知らない者はいない。


「レイプ殺人があったこと」、「その捜査が遅々として進まないこと」を短文で訴え、最後に警察署長の名前を出して、どうなってるのか問いかける。真っ赤に塗られた、この3枚のビルボードが話題になり、地元のテレビ局が取材にやってくる。


そうした、まわりの反応などお構いなしで、主人公は自分の主張をハッキリと明確にする。


署長は言う。捜査をし、怪しいと思う人間を全て調べたけれど、町に該当者はいなかった。外から来た人間が犯人なら、逮捕には時間がかかる。


署長の言うことはもっともだし、署長個人にも大きな問題が立ちはだかる。余命幾ばくもない膵臓癌に冒されている。町の人々の尊敬を集めている病気の署長。彼を糾弾する主人公。町の人の彼女への反応は冷淡だ。


署長を攻撃する主人公を憎む警察官もいるし、町には署長のシンパのような人間も。主人公自身にも身の危険が迫る。


様々な理不尽。歯止めの効かない感情。自分1人では抱えきれない。何かに縋りつきたい。それで解決出来ることではないと分かっていても。。。


絶対だと思った男も犯人ではなかった。結局、解決ならないまま終焉を迎えるが、それでも、主人公は立ち直っていけるだろう。そんな不思議な予感をさせるラスト。


ミヒャエル・ハネケ監督の「白いリボン」を見た時の混沌とした感情をなぜか思い出した。


面白かった。。。