今日も徒然、中洲日記

ほどほどに映画が好き。ほどほどに食べることが好き。日々気づいた事を綴ります。

ジェイムズ・マクブライド

作家のジェイムズ・マクブライド氏はあの感動的な映画、「セントアンナの奇跡」の原作者で、監督のスパイク・リーの熱い要望に答え、映画用脚本に書き下ろしたまさしくご本人様!!


図書館の検索コードでマクブライド氏の名前で引っかかったのは1作品だけだった(((^^;)


本日読了はその本。。。


マクブライド氏本人の出自を辿るお話。


『母の色は水の色 〜12人の子を育てた母の秘密〜』ジェイムズ・マクブライド(早川書房)


以下、感想。。。



















まず、黒人であるジェイムズ・マクブライド氏の母は白人であり、ユダヤ人である。


日本人(特に私…)には、民族の違いが及ぼす影響について、今一つ想像力が働かない…


アメリカ南部は特に黒人差別の酷い地域だったというのは、いろんな映画やお話で見聞きしているけど、現在においてなお、人々の心に暗い影を落としてるんだと痛感した。


ナチスの台頭したヨーロッパ。


ポーランド生まれのユダヤ人であるマクブライド氏の母親は家族と共に自由の国アメリカにやって来る。


黒人相手の商売で成り上がっていく父(人間失格野郎。。。)と障害を抱えながら、ユダヤ人の仕来たりを守り、不本意であるだろうに父に付き従う母…


こんな両親の間で自分の居場所が見つけられないマクブライド氏の母親。


初恋の相手に裏切られたことがきっかけで、彼女は自分の育った町に拠り所をなくしてしまう。


最終的に「ユダヤ人」を捨て、素晴らしき人格者の黒人男性と共に歩み、すっかり黒人社会の人間となって、生きていく。


本人に全く後悔は無いようだけど、彼女が飛び出してきたユダヤ人社会は彼女を死んだものとして捉え、一切の交わりを拒み、拒否し続けた。


民族って、こんなに根が深いものなの?


かつては、白人を見ただけで殺されてしまった黒人がいたという。。。


そんな時代を回りからの目に振り回されることなく、差別も偏見も向こうにまわして、12人の子を育てた女性って、ただただ凄い!!


でも、本人にしたら、若くして最初の夫と死別し、生きていくのに必死で、回りの目なんて気にしてる暇もなかったんじゃないかなぁ〜(^-^;


再び出会いが訪れ、今度の夫も人格者で…ところが、この夫にも先立たれ…


気がつけば、12人の子供達はひとかどの人生を歩み、若い頃の母の苦い思い出を思い出す暇も与えないほどの幸せに包まれている。


こんな人がいるんだなぁ(*^^*)


そして、そんな女性の息子が優秀なライターとして活躍してる。


「事実は小説より奇なり」


マクブライド氏の母親はまさに!!


印象に残った場面。。。
子供時代のマクブライド氏が母親に訪ねる「ママの色は何色?」


その答えがタイトルになっている。「白でも無い、黒でも無い…水の色だよ。水は(色が)見えないだろう」

当時の差別を受けた人々の正直な思いだったんじゃないかな…


ところで…アメリカの文壇って凄い。先日読んだ「荒野へ」のジョン・クラカワー氏や本作のマクブライド氏…


いわゆるノンフィクション・ライターだよねぇ〜。


ただ、取材し、考察したことを並べるのではなく、1級の読み物になってるもん!!


セントアンナの奇跡」を読める日が来るのを楽しみにして、待とう!!


ところで、映画「セントアンナの奇跡」の冒頭部分に郵便局で客の男性を射殺した犯人の黒人男性に取材する白人男性が登場する。


彼のポジションこそ、実際にマクブライド氏があの事件で立った場所だ!!