藤原伊織氏の絶筆となった『遊戯』
藤原さんが亡くなったとニュースで聞いた時、少なからずショックで…
江戸川乱歩賞を取った「テロリストのパラソル」
私が一時期、江戸川乱歩賞受賞作品ばかりを読むきっかけとなった小説だった…
そして、大いなる期待を持って読んだ次作「ひまわりの祝祭」が、あまりのダメっぷり…(T-T)
すっかり、意気消沈して、全く期待もせずに読んだ次作「雪が降る」
これは最高だった!!
短編小説なんだけど、藤原さんの筆はこの形がベストだと思えるほど…
その後、藤原さんの作品には触れることなく、歳月を送り、亡くなった後で「遊戯」を手にした。
以下、感想。。。
「遊戯」というタイトルの短編小説を出発点にした連作小説…
子供時代の暗い記憶と生きる30歳過ぎの男と今時じゃない20歳の女の…恋愛というには、あまりに不器用な交流を描いた良品。。。
途中、2人を監視する「自転車男」の登場で、2人の置かれた立場は一気に緊張を高めていくはずだったのだろうけど…
藤原さんの筆は、ここで終わりを告げる。
でも、この時点でさえ、主人公達の物語は完成度の高い良品として、仕上がっていると思う。
連作最後の「回流」
最後の数ページは、美しさすら感じさせる…
同時に収録された『オルゴール』
これが実質的には最後の作品ということになるのかな…
『遊戯』に始まる連作短編小説は、ついに結末をみることなく、終わってしまったけど…
『オルゴール』は短編小説として、完結しており、これまた良質な作品だと思う…
短編小説を完成度高く書ける作家こそ、力のある作家なんじゃないかって…
読んでおいて、良かった。
もう少し、藤原さんの小説を楽しみたかった…