今日も徒然、中洲日記

ほどほどに映画が好き。ほどほどに食べることが好き。日々気づいた事を綴ります。

黄色い星の子供たち


ずいぶん前から、予告編が気になってたので、まぁ、お気に入りのシャンテで上映だし…


最近、本当にあったことをベースにした第二次対戦当時の映画化がコンスタントに行われてる…


連合国軍vsナチスという以前からある「闘い」としての対峙の映画化ではなくて、当時の他国の状況や戦況の影の出来事がスクリーンで語られるようになったよ。


例えば…「カティンの森


当事者が語らなければ、歴史の表舞台に引き出されることなく、過ぎ去ってしまったかもしれない数々の出来事…


この「黄色い星の子供たち」も同様。


公開前にこの映画の主人公である少年が、映画についてインタビューに答える記事を読んだ。


彼の記憶にある出来事は克明に語られ、さらに映画の登場人物は全て実在する(正確に言えば…当時実在したと過去形にしなければならない…悲しいけど)とも明かした。


監督は彼の語る「その時」「その場所」「その人」を丹念に追いかけたのだという。


登場する人物は約80人…


その全ての人物に対し、取材をしたという。当人に会えなければ、関係者にコンタクトをとったのだろう。


役名は全て当事者達の名前だ。


劇中、ある指令を出したヒトラーが呟く…「男も女も子供も分からなくなる…」と。


彼の指令に従えば、結果としてはそうなるのだが、映画の作り手達は、その1人1人に名前があり、人生があったことを訴えていく…


あの時代、正義が正義でなくなり、自らの間違いに気づきながら、大きな流れに抗えず、呑み込まれていった人々…


国の中枢をあずかる人間も同じだ。


ただ、映画のラストにも語られているが…


フランスはあの日24000人以上のユダヤ人を検挙する計画だったが、実際に冬季競輪場に収容されたのは14000人だった。


ごめんなさい…13000人だったかも…


つまり、フランスの当局の取締りに対して、市井の人々が身近にいる10000人ものユダヤ人達を匿ったのだ…


当事者たる「少年」は紆余曲折を経て、成長するが、自らの経験を語ろうとは思わなかったという。


それだけ、彼の心に深い傷を残した。


1人生き残った彼の思いを本当に理解することなど出来はしない。


その彼が長じて、語ろうと心に決めたのは、やはり「目撃者」としての使命だろう。


1人の看護婦の目を通して、史実を淡々と語っていく。


ことさら、盛り上げたりもせずに進んでいく。


だから、少し肩透かしを喰らうかもしれない。


冬季競輪場に収容された1万を超えるユダヤの人々は、最終的に25人しか帰ってこなかったという。


ラストで看護婦が1人の少年と出会う。


彼がその中の1人なのか、あるいは、せめて、希望を持たせるために「映画」の中で出会ったものなのか…


今だからこそ、知ることの出来る「過去」を心に刻むだけでも、観る価値はあると思う。


作品としてどうかとか、そんなのはこの際関係無しに…