「悪人」の吉田修一さん…
結構、アクの強いお話を書く人なのかと思ってたけど、「横道世之介」を読んで、あれれって感じだった。
今回もどちらかと言えば、不思議な人間的魅力を持った青年を巡る物語。
以下、感想…
東京という街に、様々な事情を抱えて集まってくる人達…
新宿・歌舞伎町にはさらに多くの人達が辿り着いた場所を拠り所に毎日を送る。
浜本純平もそんな若者の1人。
関西のオーナーに雇われて店を出す美姫ママに気に入られ、店の雑用係兼バーテンダーとして歌舞伎町を根城にしている。
この浜本純平君が出会う人達がまた歌舞伎町の住人らしい。
正直、「歌舞伎町の住人らしい」というのがどんな人達なのか、今一つ私には分からないけど、テレビや人の話で見聞きする歌舞伎町のイメージのままの人達が次々と登場してくる。
そして…
純平と回りの人達の日常の描写にいい加減「飽き」がきた頃、純平は故郷の秋田県大館に戻る決意をする。
ここからは、それまで確かに純平を取り巻く人脈の中に存在はしていても、物語の進行上、深い接点も無くきた人達が、一気に繋がってきて、秋田県大館を目指す(((^^;)
ここからはホントに面白い(^-^)v
それまでの前振りが鬱陶しくなるくらいだ!!
で…
なんで「猿蟹合戦?」っていう疑問がどんどん大きくなる(((^^;)
ラストの章の「第3景」あたりからは、涙が止まらなくなって、自分でびっくり(笑)
感動的な涙というよりは、爽やかな涙…
実際の選挙運動の描写などほとんど無い…でも、純平を応援する人達の様子が見えるような気がしてくる。
不思議だ!!
多少…いや、かなり強引なお話の展開も数々あるんだけど、みんなの純平への傾倒ぶりに押されて、なんとなく、こんなもんだと思っちゃう。
純平が国会議員となった後、地元の事務所を任されたのは九州から来た歌舞伎町時代の仕事仲間だ。
彼は同じ島の出身である妻と子を伴って、東北の地に居を構える。
不思議な縁で、みなが集まってくる…
また、集まってきた彼らは、よそ者に冷たい東北の人達の壁をすんなり乗り越えて、根付いていく…
これが「縁」そのものなんだよなぁ。
いろんな不幸はあるけれど、最後は心が暖まるお話…
そうそう。。。
「猿蟹合戦」の意味!!
「猿蟹合戦」は「スカッとする話」なんだそうな…
つまり、この浜本純平を巡る様々な物語は、要約すれば、最後は「スカッ」とする話ということだ(^-^)v