「午前10時の映画祭」にて鑑賞。
この映画祭もすっかり定着したのね。まさか、こんなにたくさんの人が来るとは思ってもみなかった。
私的には第1回目で「ショーシャンクの空に」を観て以来の映画祭鑑賞。
かねてから、大好きな映画「ニュー・シネマ・パラダイス」をスクリーンで観たかった。
ジュゼッペ・トルナトーレ監督作品…
観終わってから知ったのだけど、今回観たのは、劇場公開版で、高校時代に出会った彼女とのその後のエピソードはカットされたもの…
町の娯楽は映画館で映画を観ることくらいしか無かった時代に、町のご意見番として、今で言う「映倫」のような立場で、ただのキスシーンを「ポルノ」と断じて、カットを強要する牧師。
そして、その命を受け、キスシーンをカットする劇場の映写技師は、映写機の横にある小さな穴から劇場内を見渡しては人々の映画に一喜一憂する姿を見続けている。
そして、彼らの足下をチョロチョロと動き回るのがこの映画の主人公トト。
戦争に行ったきり帰ってこない父親を待つトトは母と妹の3人暮らし。
映写技師はトトにとっては父親代わりでもある。その彼に邪魔にされながらも毎日映写室に潜り込んでは映画を楽しんでいる。
そんなある日、加熱した映写機の影響でフィルムに火が点き、劇場は全焼し、技師は大火傷を負い、目が見えなくなってしまう。
町で、彼の代わりに映写機を回せるものは、まだちいさな少年のトトしかいない。結局、娯楽を失うことを良しとせず、大人たちはトトを映写技師として雇うことに…
相変わらず、学校と映写技師としての仕事とに追われながら、高校生になったトトは都会から越してきた銀行役員の娘と出会う。
身分違いの恋。まわりで見ている大人たちの方が、彼らの恋の危険さを察知して手を打っていく。
町での出来事は幻で二度と帰ってきてはいけないと技師に送り出された主人公は、都会で、成功し、有名な映画監督としての日々を送ることになる。
そして、30年間1度も帰省しなかった故郷に帰る理由を母親から突きつけられ、舞い戻る。
映写技師の葬儀のために…
既に人の来なくなった劇場は解体の準備が進み、故郷も新しい時代の波に呑み込まれていた。
感慨にふける主人公の手に映写技師の形見が手渡される。
自分の街に戻った彼が形見の古いフィルムケースを開けると…
かつて、牧師によって検閲され、カットされたキスシーンだけをつなぎ合わせた映像だった。
このラストはもう涙なくしては見られません。
今の時代、映像で表現するのはあくまで表層的な物事の姿形ばかりで、物語のストーリーはセリフとして、出演者に語らせることが増えたように思う。
その点、この映画は何も語らない部分で胸に訴えてくる。
そうでなけれは、あのラストでこうも泣けないよ。
出来れば、完全版を観たかったなぁ…
既に終わった恋の後始末をつける場面を…
でも、それが無くても、これまでの出来事は幻だと送り出す映写技師の言葉に無理は無かった。そこがなんだかとっても凄いことのような気がして…
何度も見た映画なんだけど、今まで以上に心を熱くさせるというのは、スクリーンのマジックによるものか…