今日も徒然、中洲日記

ほどほどに映画が好き。ほどほどに食べることが好き。日々気づいた事を綴ります。

大統領の執事の涙


試写会にて鑑賞。


予告編を劇場で観て、普通に観るつもりだったから、ある意味ラッキー(*^^)v


で、内容は…


お話は予告編通り。7人のアメリカ大統領に仕えた黒人執事の物語。


アメリカ全土で黒人への人種差別が当たり前となっていた時代から物語は始まる。


主人公セシル少年は農園の下働きをする夫婦の元に生まれる。彼はいずれ両親と同じように農園の働き手の1人になる。


それが彼の一生だ。


ところが、農園のドラ息子がセシルの母親を慰み者にしたことから、抗議した父親が殺され、そのことにショックを受けた母は廃人同然に…


農園主の老婆は、セシルを気の毒に思い、農園作業ではなく、家での仕事に就かせる。


当時、家内でメイドや執事として働く黒人は「ハウス・ニガー」との蔑称で呼ばれていた。


白人の暮らしの中で、自分は空気のように振る舞うのだと教えられ、「ハウス・ニガー」としての基本は少年のうちに身につけたセシル。


しかし、そのまま同じ家に居続ければ、いつか父と同じように殺されてしまう。セシルは家を出て、1人新天地を目指す。


空腹に耐えられず、食べ物を盗んだのが縁で知り合った、黒人ウエイターに客のもてなし方を学び、彼の推薦を受け、都会の豪華なホテルで仕事に就く。


そこで、政治に興味が無く、空気のように仕事をこなす彼を見初めたのはホワイトハウスで給仕関係を仕切る事務官だった。


ここから、彼の新しい生活が始まる。


ホワイトハウスの主人である大統領の執事としての生活。


彼は、大統領の執務室に出入りをしても「見ざる言わざる聞かざる」を貫き、代々の大統領の信頼を勝ち得る。


時代は、公民権運動の気運が高まり、アメリカ国内は大きな歴史の転換期にあった。


そう言った世情に左右されることなく、大統領の執事の仕事は続き、白人スタッフとの待遇の違いは改善されることもない…


少しずつ黒人スタッフも発言を許されるようにはなるが、それはあくまでも形だけだ。


そうやって、白人の代表とも言える大統領に誠実に仕え、信頼を得ることで黒人の立場の向上を勝ち取ろうとするセシル。


しかし、彼の息子は考えを異にする。


公民権運動の一翼を担い、活動家として、街に飛び出していく。


執事として、様々な時を大統領の側で過ごしたがために、家族や近隣の黒人からは白人に子飼いにされたと誤解を受け、厳しい日々が続いたはずだが、彼は淡々と職務に忠実であろうとする。


これが素晴らしい。


代々の大統領が彼を信頼し、彼や他の黒人スタッフの姿を通して、人種差別を考えていくようになる。


彼の引き際も素晴らしい。次男をベトナム戦争で亡くし、妻を亡くし、残った長男との確執を乗り越え、息子とともにデモに参加し、留置される。


黒人として全てを経験した彼は、ラストで夢にも思わなかった黒人大統領の誕生を目にし、長くホワイトハウスに仕えた執事としてその黒人大統領・オバマに招待を受ける。


静かな感動が続く映画だ。けして、号泣するような映画では無いけれど、アメリカの負の歴史と平行しながら、時代の荒波の中で、確かに大きな一歩を記した「普通」の黒人男性の生き様をじっくりと感じ取る映画だ。


エンドロールで主要キャストの名前が出てくる前にプロデューサーの名前が登場するけれど、この映画はびっくりするほどプロデューサーが多かった。


そして、なんとも豪華キャストで驚かされる。


もの凄い豪華キャストで地味な映画を作るって、ある意味最先端\(^o^)/