試写会にて鑑賞。
主演がエミール・ハーシュなので、試写会関係なく観るつもりだったけど…
エミール・ハーシュ出演作「ある愛へと続く旅」も記憶に新しいとこだけど(私的には昨年のベスト10に入る映画…)、今回も重いお話でした。
死期を察した病身の母から、遺言を託された兄弟。ずっと2人でいるようにと…
彼らは母の死後、列車に乗って町を出ようとするが、乗りはぐった兄が片足を失い、そのまま町のモーテルを寝床に生活を始める。
弟は生活のために中古車販売店で14歳の時から働き始める。そこの社長が兄弟を暖かく見守り続けてくれていた。
彼らの辛く不運が重なる日常には、回復の兆しも感じられない。
そんな閉塞感漂う毎日に立ち向かうために、弟は物語を紡ぎ、兄はイラストを綴る。
彼らは、自分たちが主人公のおとぎ話を語る。
それは夢や希望にあふれた物ではなくて、一風変わった物語。
そうやって、生きてきた彼らに大きな事件が…
自分たちと同じ様な境遇で、両親を失い、里親のところを転々として育った天涯孤独の少年を兄が車で轢いてしまい、死なせてしまう。
即死だった少年の遺体を病院の前に置き去りにして、兄は逃亡する。
恋人の拳銃を使って、自殺を試みるも怖くなって足を撃ち抜いてごまかしてしまう。そんな兄の元に警察が話を聞きにやってきて、兄弟は今度こそ町を後にする…
社会的に見て、この兄弟の対処はあまりにも無責任でどうしようもない。
しかし、彼らはそうやって生きてきた。そうやって生きるしかなかった。だから、現実逃避のおとぎ話を語りながら、現実には向き合わずに逃げることで、日常を保っていく…
それが、どこまでも続くはずもなく、兄は足の怪我がもとでこの世を去る。
そして、弟はかつて愛した女性のもとに向かう。
確かに少年を死なせてしまって、ひき逃げをしたんだけど、それについて多くを語らないこの映画は、社会通念上の正しさを基準にはしていないのだろう。
そこよりも兄弟の結びつきとそれぞれの思いがベースだ。
話の内容もけして楽しいものではないし、自分たちが大きな不運に見回れていることを十分承知している兄弟の姿はかなり重い。でも、スクリーンに目が釘付け…
不思議な感覚…
兄が自分たちのような不運な人間には不運な女が似合うのだと弟に諭す場面…マイナスとマイナスをかけたら、プラスになるぞって思わず心の中でつぶやきました。