今日も徒然、中洲日記

ほどほどに映画が好き。ほどほどに食べることが好き。日々気づいた事を綴ります。

ある過去の行方


「別離」の監督の新作と聞いてBunkamuraル・シネマへ…


一緒にBunkamuraへ出向いた相方はカンヌを取った「アデル…」を観て、私はこっち!!


別に同性愛を蔑視してるわけでもないし、映画「チョコレートドーナツ」に登場したゲイのカップルを見てもなんら感じることはなかったけれど、「アデル…」はダメ(・・;)


レズは映像的にどうも生々しくて、気持ち悪くなっちゃう…ごめんなさい…


そこで、私は「ある過去の行方」を選択!!


さて、その内容は…


もう「別離」を完璧に覚えてるわけじゃないんだけど、映画の舞台が変わっただけですいぶん印象がちがうんだなぁと…


主人公達が暮らす土地というのは物語に大きな影響を及ぼす。その環境や文化…


地域の色を感じ取れる前作に比べれば、本作は登場人物そのものの色によって雰囲気付けられているように思った。


イラン出身で、別居と同時に祖国に帰国した前夫をフランスに呼び戻した女。


なぜ、数年経った今になって呼び戻すのか。


女は新しい男と恋に落ち、その男の子供を妊娠した。子供が生まれるとあっては、男との結婚を考えねばならない。けれど、別居した前夫とは正式に離婚の手続きが済んでいないのだ。


女の一方的な都合で遠くフランスに呼び戻された前夫は、妻に結婚を考えている男がいることも、ましてやその男の子供を妊娠していることも知らない。


当然ながら、滞在中のホテルを手配してくれていると思っていた妻は、来るとは思わなかったという自分勝手な言い分で前夫を自宅に連れてくる。


そこで、前夫が目にしたのは見知らぬ少年。既に交際中の男は彼女の自宅に居場所をもうけていた。


女は何がしたかったのか…


物語の途中で、彼女の様々な勝手なやり方に閉口した前夫が指摘する。別居直前の頃、フランスでの暮らしに心身ともにバランスを崩していた彼への復讐なのかと…


前夫でさえ、3人目の夫である女…思春期の娘はそんな彼女を受け入れられない。


母親と相手の男との不倫が男の妻の自殺に繋がっていると思い込んで人知れず苦しんでいるのだが、そんな実の娘の痛みにも気づかない女。


結局、いつも自分の思いが一番でなくては生きていられない女…


彼女を理解してくれない人とはただヒステリックに対応するしかできない。


そんな母親を距離を置いて見つめる娘たち。


大人になれない女の言動には全く理解が及ばないし、共感も出来ない。ただひたすら、嫌悪感が募る…


物語は人の性を強く追求したズシリと来るものだが、とにかく後味が悪いし、女の為すこと全てに吐き気すら覚える。


こんな映画はそうそうないね(^◇^;)


新しい男の妻が何を思って自殺したのか、物語のラストに向けてその真実が明らかになっていく。


そして、男の妻が死にきれず意識不明のままベッドの上で生きながらえている姿をみて、つくづく思った。


こんな身勝手に振る舞う女だから、まとも男は結局去っていくのだと…


彼女の表面だけの魔力に吸い寄せられる男は所詮ロクな男ではないと…


そして、この新しい男は試されているのだと…


いつ目覚めるとも分からないベッドの上の妻とのラストシーンが男の決断の時なのだと…


そして、また女は1人になるのだ。それはさして遠くない…


自分の実の娘ではないのに、娘たちの心の揺れに真摯に向き合う前夫が哀れにさえ見える。こんなに男をバカにした女は地獄に堕ちれば良いとさえ思ったけれど、こういう女はどこまで行ってもこのままなんだろう。


結局、自分の愚かさに気づかず、まわりの人間を傷つけ、そして、みなが去っていく。自分の味わう孤独が去っていった人間のせいだと心底思って生きていく。


怖い…


こんな人に出会いたくない…


タイトルと内容が私には今一つリンクしなかった。「ある過去」とはどの過去なのか…


「別離」同様、子供がポイントになってると思った。