今日も徒然、中洲日記

ほどほどに映画が好き。ほどほどに食べることが好き。日々気づいた事を綴ります。

ファイ 悪魔に育てられた少年


大好きな韓国映画です。


洗練された映画はハリウッド作品で出会うことが出来ますが、どんなに名演技の俳優が出演しても、どんなにお洒落な俳優が出演してもある一定の泥臭さを失わない韓国映画は1つのジャンルとして確立した方が良いのではないでしょうか。


この度は、5人のワケあり風の男たちに育てられた少年ファイの物語。


ある意味、彼の成長物語であり、親からの巣立ちをスクリーンに…


って言っても、こうまで強烈に親から巣立っていく子供はいないだろ?


少年はいつも制服姿で街を歩く。


彼は彼を取り巻く特殊な環境のために学校という世界に属したことは無い。学校で学ぶ以上の物を5人の父親からそれぞれ受け継いでいる。


彼がこの家の子供になったのは偶然のような必然…


その必然の歴史が後半になって、彼の前に示される。


既に殺人鬼としての狂気を自分の中に見出してしまった彼にとって、自分の出自と因縁はどうにもならないしがらみなんて物じゃなくて、彼自身の力でねじ伏せられる物になっている。


怖いねぇ〜


父親たちのリーダー格の男は、自分の心に染み着いた「怪物」がファイにも宿っているのだと考えているワケなんだが、だいたい、ファイの心に怪物を宿してしまったのは自分たちの悪行のせいじゃん!!


自分の心に巣くった怪物をやっつけるためには自らが怪物にならねばならないとファイを強く諫めるんだけど…


あんた、なんて勝手なこと言ってんのよ、バッカじゃないの(怒)って、スクリーンに文句たれそうになりましたよ、全く( ̄△ ̄)


ファイの人生を180度転換してしまったことに、後悔をする父親もいれば、何も考えてない父親もいる。


それでも、10年ほど手元に置いて育てたファイにそれぞれの思いはあるのだ。だけど、リーダー格の男の強い思いの前では自分の心に蓋をしてしまう。


その日、その日のファイの無事だけ…この先の彼ら親子の時間など考えてもいない。


でも、ファイはそれぞれの父親を自分に向けられた愛情の範疇だけで慕っていく…


ファイと同じように半ば軟禁状態で彼らに囲われていた女を母親代わりに、普通の家族には考えられない日常を「普通の生活」として受け入れていくファイ。


自分にも普通の人生を送れる可能性のあったことを知るファイ。その普通の人生は地獄の父親たちに奪われたことを悟った彼は、彼らに学んだ方法でそれを取り返しに行く。


それは最終的に父親たちに刃を向けることに繋がっていくのだが…


父親たちはずっと前からそういう日が来ることを予期してファイを育て、彼らなりの屈折した愛情を与いたんだ。


なんだかなぁ…


映画とは言え、哀しすぎるだろ…


ファイは父親たちに地獄の選択を強いられ、その中で怪物として目覚め、その父親たちを心底恨むのだけれど、父親たちに襲い来るもう一方の悪を彼の力で排除していく。


なんとも、心のバランスを維持するのが難しいギリギリのところで、目の前だけを見て選択していく。


スゴいなぁ…


うん、この役を演じたヨ・ジング君がね…


撮影当時はまだ15歳。それでも、名だたる大人の俳優たちを向こうにまわして、堂々と演じている。


このまま、俳優街道まっしぐらだね。変にイケメン路線やラブリー路線を目指さず、韓国映画ならではの泥臭さを貫く俳優になってほしいねぇ…


際物というわけではないけど、血を見るシーンが多いので、苦手な方にはお勧めしませんが、どんだけ韓国映画はスゴいんだと思ってる人には入門編として良いのではないでしょうか。


「入門編」だからね!!これでもさっ!!