ヒューマントラスト・シネマ渋谷にて「容赦なき韓国映画」というテーマで公開中の韓国映画の中の1本。
先週観た「テロ、ライブ」と同様。
原作は東野圭吾。何年か前に日本でも寺尾聰主演で公開されている。
原作も読んでるし、邦画なのに珍しく観てるけど、この三者の中で今回の韓国映画がベストだと思う。
原作より良いって何?って思われるかもしれないけど、明らかに原作とは違う部分もあるし、全編を通して納得のいく形でまとめられたという点では今回の映画が1番だと思った。
韓国映画界の底力というか何と言うか…
チョン・ジェヨンssiはホントにハズレがありません。全部観たワケじゃないけど、観たものはどれもみんな彼が活きてる‼
ハズレ無しの俳優さんが多過ぎだよね、韓国映画界。どうしてなんだろ〜。
日本で言えば、年代的に堤真一とかの世代から浅野忠信辺りの…この中年世代の皆さん、当たり外れが大きいよ(汗)
まぁ、日本は韓国からすれば、外国だから、ヒットが狙える良作しか海を渡れないのかもしれないし、だから当たりばっかりに感じるのかもとも思ったけれど。それにしても、年に何本も彼の作品を見かけるワケで…
やっぱり、ハズレ無しだよ‼
そんなハズレ無しの主演俳優が、愛する娘を世の中ナメた若造に蹂躙され、無残な姿で発見され、復讐を誓うという父親を演じる。
普通の父親が犯人憎さで、犯人を追い詰めていく様は鬼気迫るものがあって、本当ならとっくに体が動かなくなって良いハズの怪我を負いながらも執念で犯人に迫っていくラストは観てるこちらがガチガチになるほどの緊張感だ。
雨の日は忙しい仕事を抜け出してでも、娘を迎えに行ってた父が、その日は仕事に追われ、気にかけながらも果たせなかった。
そして、翌日、家に帰らず、心配していた娘の所在が明らかに…
ちょっとした行き違いで、プイッと学校に出かけたまま、娘は目を背けたくなるほどの姿で発見された。
なぜ迎えに行かなかったのか、なぜ気持ちよく送ってやれなかったのか…父親は自分を責め、呆然として警察署の前から立ち去ることができない。
その無念さ、悔しさ…ジェヨンssiの姿は見ていられない。その思いを理解しながらも刑事として事件解決に当たる男がまた良いのだ。
父親に匿名の情報提供があり、犯人への憎しみから彼は復讐に走る。
刑事は犯人の凶行を認めることは出来ないが、父親が復讐すれば、父親も追わなければならない。彼も複雑な思いを抱えて、捜査に乗り出す。
登場人物の大半が男性ということもあってか、骨太な男のドラマになっている。
唯一、イケメンで優しい顔立ちの若手刑事が、若さ故の正義感で、凶悪な少年こそが「悪」だと訴え、自分の仕事の意味に悩む辺りだけがソフトと言えるのかな。
そう、この映画、題材はかなり濃い目の後味が悪い作品だけど、若手俳優がたくさん出演している。
被害者役の主人公の娘、それを襲う高校生役の男の子が3人。そして、先に上げた若手刑事。
5人とも素晴らしい。若者独特の雰囲気を出しながら、さらに大人たちの中でしっかり演じてる。娘役のお嬢さんは確か子役からやってたお嬢さんだったと思う。
ホントにこの国はどうしてこうも「演じられる」役者が次々と登場するのか?
本もしっかりできているのだろうが、それに肉付けする当の役者たち、父親や刑事たち、さらには犯人の少年たち、誰を見てもぴったりマッチしてて…
先輩刑事は言う。
「少年を見続ける」のだと、そして、若手刑事は、犯人の少年の初公判を傍聴に行く。彼も先輩の道を追う。犯人の少年がどう生きていくのか、ずっと見続けていく。
きっと、彼はそうやって刑事の道を歩んでいくはずだ。将来の彼の姿が見えるような…
1つのシーンからそこには描かれていないものまでが見えてくるような…
ストーリーはけして感動的なものではなく、むしろ後味悪くて、重たい気分で席を立つことになるけれど、こんな完成度の高さを味わえるのはそうそう無いと思う。
父親が町なかで犯人を追い詰め、 銃を構えて詰め寄っていくラストの山場の犯人の少年の困惑ぶりと恐怖、犯行への憎しみと刑事の仕事との板ばさみに葛藤する刑事たちの緊張の色、そして、死んだ娘の無念を果たさんとする父親の叫び…
同じように映像化しながら、決定的に違う邦画との「差」を見ることが出来るシーンの1つ。
東野圭吾作品では「容疑者X」も韓国映画の方が説得力があった。邦画はキャスティングが合ってないと思ったし…
韓国で製作される方がしっくりくるって、ちょっと頑張らなきゃダメだよ。
日本の作家が日本を舞台に日本の文化や社会の現状を背景に書いてる小説をなんで他国の感性を持った人が独自にアレンジして納得できる物を作ってしまうのか…
韓国映画を観るとかなりの確率で凄さに打ちのめされる。もちろん、全部ではないけれど…