今日も徒然、中洲日記

ほどほどに映画が好き。ほどほどに食べることが好き。日々気づいた事を綴ります。

フォックス・キャッチャー


上映館が少ないけれど、評判が良い映画はやっぱり観ておきたい。


でも、近場でやってないと結局タイミングが合わなくて、観ないまま終わる。そんなことを年明けからずっと繰り返していて、かなりストレスが溜まっています(T0T)


今回は、万が一にも間に合えばと行ってみたら、劇場側が「まもなく本編開始です」と言いながらも入れてくれたおかげ。


時間的には有楽町スバル座の「フェイス・オブ・ラブ」には十分間に合うから、一か八かで先にカドカワに走っていったのが功を奏した感じ。


予告編が終わるタイミングで着席。


静かに幕が上がる。


ホントに静かに…


何事にも秀でた兄とそんな兄の影に隠れ、いつしか人とのコミュニケーションにまで影響が出た弟。


オリンピックのレスリング競技で兄弟揃って金メダルを取った彼ら。でも、皆の目は兄にしか向いてない。


そんなコンプレックスを知ってか知らずか、果たせなかったレスリングへの夢を捨てきれない財閥の御曹司が、素晴らしい練習環境を整え、弟を自らのジムに移籍するよう働きかける。


兄の元を離れ、自分の道を行こうとする弟。


ここから、彼ら兄弟の人生が転がり始める。


静かな映像の中に漂う緊張感が最初からずっと途切れることがない。ヒリヒリと張り詰めた空気がいつか爆発しそうな、そんな予感がずっとつきまとう。


その予感が冷たい恐怖に変わっていく。


全般的にセリフが少ない。


だから、主要登場人物3人が示す表情の意味が大きく、スクリーンから目が話せなくなる。


これが実話だというのだから、恐れ入る。


こんなピリピリとした毎日が「フォックス・キャッチャー」で繰り返されていたとは…


自分を理解しようとしない威厳ある母親に対する御曹司のあがき。結局は彼のコンプレックス払拭のための道具でしかなかったレスリング・ジム。


自分がどれほど誇れる人間であるのか、そればかりを追った男に真の競技について語れるとは思えない。


最初は付き従っていた弟が逃げ出し、残った兄の元にジムの選手たちの心が奪われていったのは当たり前のことだ。


ところが、彼にはそれを認める勇気がなかった。そこで行き着いた結末。なんとも自分勝手な。


多くの人生の歯車が狂ってしまった凶行。


強く威厳ある母親に征服されて育った彼には、人と接する態度としてとれるものは1つだけ。人を征服すること。


自分が今、母親という立場にある私にはとても悲しい物語。


とにかく、全編緊張感が解れることはないので、観終わった後、とても疲れる。でも、作品への満足感は高い。