原題は「セルマ」
キング牧師が呼びかけて大行進をした街、「血の日曜日」の舞台となった街、セルマ。
おそらく、日本で公開するにあたり、セルマという街の名前の浸透度を考えたんだろうなぁ。だから、邦題は敢えて違う方向で決まったんだろうなぁ。
それでは、本編について。
キング牧師の伝記映画が1つも製作されていないということを知ったのは、この映画の宣伝番組を見た時。
黒人差別の歴史を語る映画は多く、その中のエピソードの1つとして登場することはあっても、彼を主人公に据えた映画が無かったって全然知らなかった。
なぜか。
実はキング牧師の演説などの映像には全て著作権が設定されているのだそうだ。その著作権は遺族が持っているそうで、使用許可が下りないのだそうだ。
では、なぜ今回は映画化までこぎつけたのか。なんと、キング牧師の演説などのシーンは、彼のスピーチの一言一句全てにおいて、言葉を少し変えているのだそうだ。
そのままの言葉でなく、同じ意味の違う言葉に言い換えて撮影に臨んだのだそうだ。
凄いなぁ。
そこまでの努力を重ねて、製作されたこの映画。キング牧師の全てでは無く、セルマでの行進をメインに据えて、その前後のキング牧師の苦悩を描いている。
崇高な使命を自覚したキング牧師。
だが、映画は単なる偉人として描かれるのでなく、自分の発言の持つ重みにプレッシャーを感じ、人々の期待に迷う悩める1人の男として描かれる。
だからかもしれないけど、実際の行進のシーンが妙にあっさりしてる気がする。
行進に参加した人々についても少しは語られるが、どうしてもキング牧師の「人」を中心にしてるので、どうも薄い。
セルマにやって来た人々のドラマもそれは相当な闘いの末のもので、全てを描くことは無理だろうけれど、やはり、キング牧師1人の話では語りきれない歴史の大きな大転換点だから、なんだか物足りないというか…
ちょっと期待値が高すぎたのかなぁ。
悪くはないけど、なんか疲れたなぁ。
大切な歴史の転換点を真面目に映画化した作品という感じ。エンターテインメントとしての映画ばかりを追ってるとこういう映画は疲れるんです。
でも、大切なことなので、映画を観て学ぶんです。
そういう映画です。