今日も徒然、中洲日記

ほどほどに映画が好き。ほどほどに食べることが好き。日々気づいた事を綴ります。

あの日のように抱きしめて


やっと観に行けましたBunkamura


このメンバーによる「東ベルリンから来た女」はまだ見てないので、そのうち見てみよう。録画してあるし。


暗い色調の映画だ。大戦後の混乱の中でスタートするので、敢えてそういう形なのか?


兵士に守られた検問を通る車。戦後の混乱期にしては立派な車を運転するのは女性だ。


助手席には顔を血に染まる包帯でぐるぐる巻きにした女性が。


さすがの兵士もその様子を見て、問い詰めることもなく、ゲートを開く。


こうして、収容所から安息の地へ逃れた女性は、まず顔の復元をする。過去を精算し、生まれ変わるためにすっかり顔を変えてしまう人が多い中で、彼女は元の顔に戻りたいと懇願する。


それは、別々に逮捕され、戦後の消息が分からない夫を探し出すためだ。


彼女は夜な夜な街に出て、夫の面影を追う。


そこで、奇跡的に出会った夫は、彼女を妻だとは認識せず、それどころか、妻の遺産を騙し取るために微かに妻に似た面差しの彼女に妻の身代わりを演じるように頼み込む。


これほどの侮辱は無いのだろうが、彼女は夫への愛が勝り、どんな形であろうと夫の側にいたいと思う。


そして、収容所から助け出してくれた友人の忠告も聞かず、夫の元に身を寄せ、縁者たちと出会う場面まで演じてみせ、夫と共に罪を共有しようとする。


忠告を無視された友人は、結局戦争により失くしたものの大きさに耐えきれず、自ら命を絶つ。


そこまで、夫に惚れていたのか。それほどの男なのか。


彼女が逮捕された直後、夫はなぜか無罪放免になり、何事もなかったかのように普通に暮らすことができた。それは裏切りでなく、なんなのか?


夫の策略通りに縁者たちと出会った主人公は、夫の伴奏で「スピーク・ロウ」を歌い始める。


最初は、音も外れ、歌詞もメロディに乗らなかった彼女だが、次第に往年の声を取り戻し、かつて夫と愛し合っていた頃の美しい歌声を聞かせてみせる。


その時になって初めて、夫は気づくのだ。彼女こそが妻なのだと。死んだと思っていた妻が、そこにいるのだと。


これ、考えたら怖いお話。


夫は一生妻の顔を見られないだろう。まともな感覚なら、妻の前から消える。命を絶つくらいに衝撃的なはずだ。


妻も結局夫の真の姿を見て、2人がやり直すなんて、夢でも無理だと悟るだろう。


なんだか、遠い遠いまわり道をして、やっと人生の踏ん切りをつけるまでのお話ということで良いか?