今日も徒然、中洲日記

ほどほどに映画が好き。ほどほどに食べることが好き。日々気づいた事を綴ります。

名もなき塀の中の王


新宿のK’sシネマに久しぶりに行ってきました。


東京ではここだけの上映「名もなき塀の中の王」


以前観た「ベルファスト71」の主演のジャック・オコンネルがこちらでも主演を。


父親が収監され、虐待を受けて育った少年は、怒りを抑える方法が分からず、暴力を介してしか人と接することが出来ない。


自分に触れるもの全てにありったけの暴力で応じるしか彼には術がない。


問題行動の果てに少年院では手に負えず、刑務所に移送される。


そこには、ずっと追い求めた父がいた。しかし、父も息子も互いにどう接して良いのか分からない。


父は、藁をも掴む思いで、刑務所のカウンセラーに少年の教育を頼むのだが、父の思うように簡単に進むはずもなく、少年の心の落ち着きは遅々として得られない。


刑務所内の序列やルールを無視する少年の行動は、いつしか父親の立場も危うくさせていく。


そんな中で、カウンセリングを受けたり、他の受刑者たちと語り合ううちに少しずつ怒りを抑え、コントロール出来るようになる少年。


しかし、それも時間切れ。


少年の命が危うくなった時、父親は自ら、ルールを犯して命懸けで息子を救い出す。


父親の行動とカウンセリング仲間の受刑者たちの励ましで、彼は1つ成長するのだが…


息子のために他の受刑者を手にかけた父はより厳しい刑務所に移送される。


父親と抱き合って別れるラスト・シーンは、なんとも言えない。


外では何1つ形にならなかった少年の思いが、刑務所の中で初めて形になっていく。


あまりに大きな代償を払って、彼は父への愛を知る。


そして、移送される父親を特別に見送る手配をしてくれた看守に彼は素直に「ありがとう」という言葉を口にする。


彼が大きな変化を遂げた刑務所での時間。ここに来なければ、気づくことが出来なかったもの。人として生きるために必要なことを身に付ける日々。


結局、彼は子供だったということなんだろうか…あまりに遠回りで、あまりに代償が大きな彼の生き様。なんとも哀しいとしか言いようがない。


父を見送って彼が所内に戻るために開けたゲートの扉がクルクルと回り続けるラスト。彼がもうここから出てくることは無いのか。


なかなか、シビアで緊張感の続く映画だった。


確かにR15+だったけど、素っ裸でのシャワー室での乱闘シーンなど、びっくりするシーンもあって、ちょっと驚き。


バイオレンス・アクションというより、刑務所を舞台にした1人の人間の成長物語という方があってる気がする。