今日も徒然、中洲日記

ほどほどに映画が好き。ほどほどに食べることが好き。日々気づいた事を綴ります。

許三観(ホ・サムグァン)


東京国際映画祭の提携企画「コリアン・シネマ・ウイーク2015」@韓国文化院


昨年も2作品鑑賞させてもらいましたが、本年も。


今年は上映される6本がことごとく「家族」をテーマにしてる映画。韓国映画って、ラブコメと「韓流ノワール」に代表されるように思うけど、その実、「家族」をテーマにした作品にも良作が多い。


「国際市場で逢いましょう」は既に公開された作品だけど、敢えて上映されますね。確か去年のその位置は「怪しい彼女」だったかな?


そんな中でまず観たのが本作。


事前情報全く無しで出かけたところ、平日の日中だというのにかなり込み合ってました。


会場でチラシを見て、ハ・ジョンウの監督・主演だと知る。そりゃあ、混むわね。


昨年観た作品の片方はその後半年ほどしてミニシアターで公開されたんだけど、もう片方はどうだったかなぁ。DVDスルーかも…


この「ホ・サムグァン」も「国際市場で逢いましょう」と同じく本国では昨年の公開だ。でも、日本での公開に特に気づかなかったなぁ。どうなんだろ〜‼


お話は戦後復興の時期から始まる。作業場にポップコーンを売りに来る娘に一目惚れした主人公。とにかく、押しの一手で、恋人のいた娘と強引に結婚する。


その11年後。最愛の妻と3人の息子に囲まれて、貧しいながらも幸せに暮らしていた。


ところが、彼には気になることが…長男が日に日に似てくるのだ。妻の昔の恋人に。


それは、彼らを知る友人やご近所でも噂になり始めた。彼はその噂を払拭するために長男の血液検査を…


大見栄きって、検査結果の入った封筒をご近所の前でを開けてみせるとそこには夫婦の間には生まれない血液型が…


ここから、主人公家族の迷走、いや主人公の迷走が始まる。


11年もの間、他人の子を育てさせられた自分がどれほど惨めかと、大騒ぎ。妻を罵倒し、なんと父として彼を慕う長男に八つ当たり。


長男はどれほど辛い思いをしたことか。正直、あまりの器の小ささに腹が立った。不機嫌な父親に向かい、長男が詫びるのだ。こんな不愉快な話はないぞ‼


家族で肉まんを食べに行くという時も、家族のために売血で稼いだ金でなんで他人に食わせなくてはならないのだと長男に言う主人公。


挙句の果てに、叔父のところにでも行って芋でも食わせてもらえと言い放つ。


深い家族の情愛みたいなものがよく描かれる韓国作品だが、それはあくまで血のつながった関係内でのことなのかもね。なさぬ仲って、まず必要以上にこだわるみたい。


映画やドラマほど徹底した感情じゃないにしても、そうした作品に描かれる情景は一般社会でも有り得ることなんだろう。


この映画の長男は、自分の出自に悩みながらも、生まれてこのかた父と慕ってきた男の背中を求めている。その父から拒絶され、行き場を失い、母を苦しめていることを知り、自分から実の父の元を訪ねていくのだが、その辺はもう涙よ。


それを主人公であるバカ父は、結局実の父親を頼って行ったと文句を垂れる。そうせざるを得ないように長男を追い詰めたくせに。


まぁ、こんなバカ父なんだけどね。長男の実父が病に倒れたことで、その家に請われて長男を手放すことになって、少し風向きが変わってくる。


その後、実父と同じ病気で倒れた長男を主人公は命を懸けて助けようとするのだ。


自分の行動や言葉が息子をどれほど傷つけたのか主人公はやっと気づくのだ。そして、冷たく突き放され、傷ついた長男は知るのだ。自分の命の危機にあって、父は全てを懸けて助けようとしてくれたことを。


ラストはハッピーエンド。なんとか必死で乗り越えた家族の危機。これからも何かあれば、あのバカ父なら風が吹き荒れそうな予感はあるけど、長男はあの時の父の姿を忘れないだろう。


大人になりきれない小者の父を大きく包んで、しっかりと家族を支えていくんだろう。


そんな未来が見えてくるような映画だった。


とにかく、長男役の子役少年に尽きる。


ハ・ジョンウをはじめ、よく見るお顔ばかりの登場人物たち。いわゆる豪華キャストの中で、この少年が素晴らしく、韓国映画界の子役の凄さにまたまた驚かされた。


そうそう、驚いたと言えば、ユン・ウネちゃん。


オープニング早々にチラリと登場(残念ながら、私はあれが彼女だとすぐに分からなかった…)し、11年後にもポッチャリメイクでご登場(こっちはすぐに分かった…汗)。太り過ぎでトイレの床をぶち抜いてしまい、骨折するという挑戦的な役を演じてました(笑)


毎回、日本未公開(公開前という意味)の作品も含まれている「コリアン・シネマ・ウイーク」。韓国文化院の綺麗で快適なハンマダンホールでの鑑賞。


来年も是非行きたいわ。