児童虐待を主題に、娘を連れ去られ、8年の歳月をかけて探し続ける両親と事件を追う警察官たちのお話。
フィギュアスケートを習う娘をリンクに迎えに行き、途中でパイを買うために娘を車に残し、店に向かった父親。
買い物を済ませ、車に戻ると娘の姿は消えていた。
一時は、事業が傾き、借金を抱えていたので、手っ取り早く金を手にするために娘を売ったのではないかと疑われた父親。
自分がその場にいなかったことの後ろめたさをちょっと目を離した隙に娘を連れ去られた夫をなじることでごまかしていた母親。
諍いが絶えず、2人の生活は破綻する。
警察側も、自身が辛い育児放棄にあった経験もある女性捜査員や過去に児童虐待案件を解決した経験から父親にあらぬ疑いをかけてしまった刑事など、8年は大変重い歳月だった。
ある日、造園業を営む父親のトラックから取引先に搬入する予定の植木が盗まれる。ふと見ると、目の先の道路に立てかけられている。その植木を追っていくと…
8年前に連れ去られた娘が立っていた。1度だけという約束で会いに来たという娘。彼女を連れ去った「組織」は彼女を監禁し、児童誘拐の手引きをさせていた。
目の前で連れ戻されてしまう娘。
父親と警察とが連携し、犯人を追い詰めていく。
組織の男は、悪びれる風もなく、普通に街を歩き、普通に生活している。そこを追い詰めていくのは、ただ事件を解決したいという人々の一途な思い。
映画なので、ちょっと駆け足の流れではあったが、考えると怖い話だ。同じ街に住む犯人が時間をかけて、対象を絞り、長く尾行し、連れ去るチャンスを虎視眈々と狙っている。
連れ去った後も、子供が騒ぎ立てないように親を盗撮して、子供に見せる。この事は、子供を黙らせるだけでなく、親たちが事件についてどう対処しているのか、子供には騒ぎ立てれば親をどうにかすると脅しをかけることも出来る。
こんな鬼のような犯人たちの顔は普通の顔なのだ。
これが怖い。
事件は解決し、娘は戻る。捜査を妨害するために監禁されていた女性捜査員も解放される。
しかし、これは幸運な一例なのだろう。彼女1人が、この事件の被害者ではないだろうことは誰にも予想がつく。
本当の解決はこれからなのだ。
ジワジワとくる怖さ、後味の悪さだ。