今日も徒然、中洲日記

ほどほどに映画が好き。ほどほどに食べることが好き。日々気づいた事を綴ります。

ミケランジェロ・プロジェクト

最終的に主人公たちがなんとしても見つけたかったミケランジェロの作品を最後に探し出したことにちなんで「ミケランジェロ・プロジェクト」なんだろうな…


原題をチェックしてないけど、「モニュメンツ・メン」じゃないの?


まぁ、そんなことはともかくも、かくも豪華なキャストでかの大戦下の隠されたエピソードを綴る。


この映画で描かれているのは、今も世界のあちこちで起きている問題に通じるもの。戦闘状態にある中で、その地域の芸術・文化が破壊されていく。その時、人はどんな手を尽くすのか…


ナチス・ドイツは、侵攻していった土地で、その地域の美術館や収集家から貴重な文化的財産を略奪していった。


かつて、美術学校を受験した過去があるヒトラーは、自分の元に全ての芸術品を集めようと画策する。集めるだけ集め、将来自分を讃える美術館を設立し、そこに収蔵する計画だった。


美術品の大いなる価値を知るアメリカの美術関係者たちは大統領の許可を取り付け、終戦間近の米軍展開地に乗り込む。


戦場で明日をも知れぬ戦いの中にいる前線の兵士達は、美術品の保護のために命をかけることに理解を示すことは無い。


それでも、7人のモニュメンツ・メンは各地に散った美術品を追う。


彼らは、例えば、酒で身を崩した後悔を抱えている者、パイロットとして戦地に行くことを願っていた者など、それぞれに戦争に対する思いがある。


武器を駆使して戦うのでなく、彼らなりの戦争だ。


そして、美術品への思いがある。


戦争映画だと言っても、戦闘シーンはほとんど無く、過酷な戦場の現実を見せる最近の戦争映画とは一線を画す。


それでも、彼らの任務は戦時下での重要な闘いには変わりない。美術品の発見シーンなど、ことさらにドラマチックに描くのではなく、ある意味恐ろしく淡々と描かれていく。


時には、命をかけて美術品を守る彼らを本隊の兵士たちはどう思ったのだろう。


僅かなチームのメンバーのうち、2人が命を落とす。最後まで美術品に心を残した2人の思いを最後まで遂げようとする仲間たち。


今なら、彼らの仕事がいかに重要なものであったかも分かるが、当時は、戦果を聞いた大統領でさえ、ミケランジェロの聖母子像を命をかけた守った兵士がいた事を30年後に誰が覚えているのか?と問うたほどだ。


それほどの価値はあるのか?と。


30年経った時、その聖母子像を多くの子供たちが鑑賞している。その像に命をかけた兵士がいたことまで書き込まれているわけではないが、でも、そうやって人々の目に触れることが彼らの生きた証明になるのではないか…


実際に、戦地での彼らの行動も映画のように淡々と冷静に進められたのだろうな。だからこそ、多くの美術品が元の持ち主の元へ送り届けられたのだろう。


こういう歴史の一端を知るのも映画の素晴らしさ。


軽快な音楽が、かなり前の戦争映画を思い出させるものだった。最近のリアルを追求した戦争映画とは内容はまるで違うが、こちらもリアルを追求した結果だ。