ここのところ、続けて読んでた高村薫さんの著作。
その中でも、雑誌連載物の今までとは路線の違うお話にチャレンジ。
以下、感想。
どこか都会から忘れ去られた里山にお年寄りだけ残されたひっそりとした村。
最近の町村合併ブームで、既に村は「旧」という頭文字が付き、それでも、昨今のネット社会は、山里だろうが、限界集落だろうが、見えない電波ですっかり土地の年寄りたちの心を掴み、ネットゲームに明け暮れるじいさんや韓流スターの情報に右往左往するばあさんを生み出している。
過去と現在が混在して、妙にアンバランスな日常を作り出している。
そんな村の入口、旧バス道に面した場所に郵便局兼村の集会所がある。
そこに集うのは、旧村全盛の頃の元村長と元助役、それに郵便局長と誰も客がいないのに集会所の主のような顔で残り物の青果を売るキクエ小母さんの4人組。
彼らの語る村の顛末と、とにかく自分勝手な楽しみを見つけるために奔走する日々を追う物語。
山里は年寄りの人数より、四つ足の獣たちの方が多く、彼らを度外視しては村の生活も成り立たない。
時に年寄りを化かす不届き者もいるにはいるが、総じて彼らは善人で、村の年寄りたちと楽しく暮らしている。
まぁ、いわゆるファンタジーだ。
4人組が郵便局兼村の集会所で、村のかつてのエピソードを茶飲み話のネタにして語り合う短編集。
それは、30年前の村おこし事業に村長たちが奔走した頃の話から始まり、行っては戻りの繰り返しで、はっきりとした時系列がぼかされている。
だが、話が進むにつれて、四つ足の獣たちは人の姿に化けるのも忘れて、素のままで4人組の前に現れたり、30年前も5年前も変わらず年寄りだったらしい4人組の姿が見え隠れしたり、そしてなにより人が死なない限界集落という不思議な現実が見えてきたり…
不思議な力のある山里の村。そこに住む不思議な年寄り。そんな年寄り4人組もラストで超ファンタジーな旅に出る。
どっかにオチがありそうで無さそうな微妙な感じで、結局「なんだったんだ?」と読み終わる。
あははは。
福澤3部作の直後に読むには、ずいぶんと毛色が違って、同じ著者だとは思えない。凄いな、高村薫さん‼