地味だけど、やっぱり観ておきたい映画。確かに映画館じゃなくても、DVDになってから見ても良いのかもしれない。
莫大なお金をかけたセットやアクションを観るわけじゃないし、手に汗握るスパイ映画じゃないしね…
でも、暗い空間の中で、隣も気にならず、主人公の心の動きに目を集中させ、1人の人生を真剣に見つめるのは映画館じゃなきゃ出来ない。
そういう意味で、この映画は絶対映画館で観るべきだと思う。
気持ちがあちこち向いてしまう環境でなく、その場で主人公と一緒に同じ時間を過ごし、その決断をしっかり見つめるために。
人も羨むような幸せな夫婦。37歳の妻ケイトの誕生日に友人夫婦を招いて誕生会を開く。弁護士の夫エヴァン、結婚前はピアニストだった料理の上手なケイト。互いに仕事を持ち、裕福な家庭を築いている。
その妻に異変が…料理中にカップを落としたり、皆の前で久しぶりに弾いたピアノでミスをしたり…彼女の異変にはALSという病名が付けられた。
発症後は数年で死に至るという病だ。
日々、動かなくなる体の状態をしっかりと認識しながら、病気の進行を受け入れていくしかない。
夫は着替えや食事、トイレの世話まで、実に献身的に妻に尽くすが、妻の体のことを気遣いながら、その体に触れなければならない緊張の日々についに耐えきれなくなる。
夫は職場の同僚と不倫を。
しかし、妻は夫の裏切りより、自分の病気が愛する夫を追い詰めていくことが辛くて、夫との生活にピリオドを打とうと決意する。
そうした大きな決断をした彼女の側には介護のアルバイトでやってきた女子大生ベックがいた。
日々体が動かなくなるケイトを患者としてしか扱わないそれまでの介護担当者や彼女の母親。
ケイトが望んでいるのは、病人として世話をしてもらうことではなく、彼女の思いも悩みもただ聞いてくれる相手。
ベックは言葉は悪いし、行儀も悪い。生意気な態度で人と接するが、実は彼女のありのままを認めてくれる人を探し求めていた。
全く違う2人が、お互いの素をさらけだし、ぶつかり合いながら、信頼を深めていく。そして、ベックは大学や今の生活を全て切り上げて、ケイトの家に住み込んで介護に当たる。
ケイトの姿があまりに辛すぎて、夫も寄り添うことが出来なかった最期を看取ったのは、結局出会ったばかりの介護アルバイトのベックだった。
その彼女がケイトに「最後まで信じてくれてありがとう」と別れの言葉を告げる。
自分の死を覚悟したケイトは、今晩は部屋に入るなときつくベックに言い渡して、眠りにつく。
ここからのシーンは、もう胸が締め付けられる。涙は止まらないし、思い出しても泣けてくる。
自分の人生に最後まで責任を持った主人公ケイト。彼女の側で介護しながら、前向きに進んでいくことの大切さを身をもって知ったベック。
どちらの女性もありのままの自分を受け入れてくれた人に出会えたとても幸せな人。
身近な人と築いた信頼は、果たして本物なのか。相手がどんな苦境に陥ろうが、どんな姿になろうが、変わらず最後まで信じ切ることが出来るのか。
あなたには、こんな生き方ができますか?と問われているように感じた。
かなりズドンとくるよ。
そうそう、ケイトの夫役の俳優さん、どこかで見たなぁと思ったら、「セイフヘイヴン」の人だ。
あの映画も大好き。この映画も…