今日も徒然、中洲日記

ほどほどに映画が好き。ほどほどに食べることが好き。日々気づいた事を綴ります。

空海


とりあえず、高村薫さんの著作なので、読んでみようと。図書館でもまだ取り扱いが始まったばかりなので、新刊なのかな?


そんなことも知らない私(~_~;)


空海高村薫著(新潮社)


以下、感想…


















なんの予備知識も無いなか、ついこの前まで永平寺で修業したお坊さんが登場する高村薫さんの「太陽を曳く馬」を読んでたので、仏教に新たな題材を求めたのかと…


でも、空海真言密教で、雲水とは違う宗派じゃない?ってくらいは私にだって分かるよ。


読んでみたら、小説ではなくて、紀行文のような…


もちろん、文献や取材、高野山現地での高村さんの印象などを交えながら、空海の人物にも迫っていくが、小説ではないからドラマチックな加工もないし、空海を取り巻く現実が語られていく。


学校で習った日本史の範囲でしか理解が及ばない私だが、空海の時代と弘法大師の時代ではまるで違う人物なのだと聞いたことは覚えている。


高村さんの考察で、確かにそうなんだと知り、なぜそうなったのかも知った。


小説家の鋭い視点と考察で、納得のいく日本史の一端を知った。


1人の僧、空海として過酷な海を渡り、本家本元の相伝を受けて日本に帰還しながら、同時代の僧侶に比して、その時代の文献が少ないことが高村さんの作家的な探究心をくすぐったのだろうか?


高村さんの提示してくれた空海の足取りの考察を後追いするだけでも、少し分かった気になってしまう(´ヮ`;)


本書は、高村さんの文章の内容に則した写真ページも多く、分量的には負担にはならない。


空海の足跡を追いながら、彼の確立した信仰が、後年様々なものを呑み込んで、広く日本の人々に浸透していく様をそれぞれの時代の状況を踏まえつつ、語る。


「太陽を曳く馬」下巻の相当のページを割いて語られたような教義を考察するものではないので、ちょっとホッとした。


こういう文章も素晴らしいが、やっぱり私は、合田雄一郎が登場する物語を読みたい。