試写にて鑑賞。いずれにしろ、観たいと思ってたので、公開前に観ることが出来て、とっても嬉しい。
さらには、会場が公会堂でなく、秋葉原のアキバシアターだったので、ミニシアターに匹敵する環境でじっくり観ることが出来、ホント感謝。
で、内容は…
とある国のきらびやかな夜の街の風景から始まる。電飾が施された街の中心部。そこには、これから始まる過酷な状況を予想させるものは無い。
その街を見下ろす宮殿にいるのはこの国の大統領だ。彼を慕う孫に自分の力が如何程のものか示すために電話をかける。「街の灯りを消せ」と。
電話1本で、街の灯りを自由に点けたり消したりできる祖父の力に孫は感動する。そして、自分も大統領の真似をして、消すための指示をするが…
真っ暗になった街のあちこちで銃声や爆発音があがり、火の手が上がる。
クーデターが起き、大統領は宮殿を追われる。家族は休養と称して国を出ることが出来たが、時期を読み間違えた大統領は孫を連れたまま、人の目を欺きながら逃げ惑う。
逃げる道中も、大統領は自らが招いた結果を受け止めることも無い。
出会った人から乗り物や服などを奪い取っても悪びれた様子もない。国外に出ることさえ出来れば、また大統領の地位に戻れると本気で思っているようだ。その証拠にかつて付き合いのあった娼婦の元を訪ね、国を出るのにあしでまといの孫を預けようとさえする。
なぜ、大統領の地位を追われたのか。権力を欲しいままにして、彼は歯向かう者を次々と捕らえ、処刑していったのだ。
一際贅沢な彼の暮らしを支えたのは、日々の生活もままならないほどの重い税を課せられた一般の民衆だ。
そうした結果、彼は息子夫婦をテロで失ったのだ。孫のそばにいるのが、なぜ両親でなく祖父なのか。最初に感じた疑問はそういうことだったのだ。
ラストで、助けが来るはずの海辺に逃げてきた大統領と孫はとうとう追っ手に見つかってしまう。
それぞれ、大統領には恨みがある。家族を殺された者、投獄された者。その恨みを晴らそうと群衆は孫にも手をかけようとする。
しかし、政治犯で長く投獄されていた1人の男が声をあげる。「復讐は復讐しかよばないのだ」と。
果たして、人々はその声にどんな応えを出すのか…
現実の世界で起こっている様々な紛争。それらの多くは復讐が復讐を呼ぶ負の連鎖が繰り返されている結果だ。
架空の国のクーデターによる政変を通して、負の連鎖を断ち切ることの難しさを示している。平和はその先にある。あなたはどうする?と問われているかのようなラストだった。
どこまでも傲岸な大統領には、その過酷な状況を見ても同情の余地は無いが、そうした環境で育った孫は不幸としか言いようがない。なぜ、自分が追い詰められるのか理解できないのだから。
全編、かなり集中して観てしまった。それだけの映画です。