どこの国も高齢化してくると同じ問題に直面するんだなと…
それでも、劇中に登場するおじいちゃん、おばあちゃんの生活は環境も良く、恵まれている。
老人ホームに暮らすおじいちゃんが主人公。おじいちゃんは昔の腕を活かして、小さな発明を続けている。
人に喜ばれる、人の希望に添う発明は微笑ましい。
夫婦揃って親しくしていた友人夫婦のおじいちゃんの方が長く病んで、寝たきりだ。おじいちゃんは毎日とても苦しんでいる。
おじいちゃんの望みは、病気との闘いを降りること。苦しい毎日が続くのなら、自ら死を選びたいと。
おじいちゃんの苦しむ姿を見続けてきたおばあちゃんは、もう限界だと感じていた。
そこで、ヨヘスケルおじいちゃんに自ら死を選択する装置を作ってくれと頼む。
安楽死が認められていない以上、おじいちゃんたちは殺人を犯すことになる。おじいちゃんは悩むが、苦しむ友人夫婦の希望を叶えようと、少しずつ仲間を募っていく。
元獣医が薬を、元警官が指紋などの警察への配慮を手伝い、友人は自らスイッチを押して死んでいく。
その後、噂が広まり、同じ依頼をするお年寄りが…
でも、ヨヘスケルおじいちゃんは最大の壁にぶつかる。長年連れ添ったおばあちゃんの認知症がいよいよ放っておけないほど深刻な状態になってしまう。
失われていく「自分」に恐怖を感じ、「自分」でいるうちに死を迎えたいと願うおばあちゃん。他人なら呑み込めたその願いも自分の妻となると認められないおじいちゃん。
安楽死を題材に、いろいろな考えの人々が登場する。
おじいちゃんの選択がどうなったのか、ラストは明確に描かれないけれど、おじいちゃんの決意は読み取れる。
問題提起と言える内容だった。
私がおじいちゃんたちの年齢になる頃、医学はさらに進歩して、多くの人々の命が救われるようになるだろう。
そうして延命が可能になればなるほど、その何倍もの重要度が増すのは、本人はもとよりその人に関わる人々の心の扱いだろう。