今日も徒然、中洲日記

ほどほどに映画が好き。ほどほどに食べることが好き。日々気づいた事を綴ります。

キャロル


アカデミー賞ノミネートが発表になった翌日、試写にて鑑賞。


当初、ダブルで主演女優賞にノミネートされるのではないかと噂された2人。テイト・ブランシェットとルーニー・マーラ。実際のノミネートではケイトが主演、ルーニーが助演と分けて選出された。


ということは女優賞を2人で独占もありうるということ。


そう思えるほど、2人の演技は良かった。


特にラストの2人の表情がね。


強い意思を感じさせるその瞳の美しさ、気高さと言った方が良いくらい。


お話は少し昔の話。同性との恋愛が今以上にタブー視されていた時代。いつ頃なのかなぁ。同性を好きになると医師の診察を受けなければならない時代。


キャロルはその事が原因で離婚を進めている。けれど、夫の方は美しい妻、キャロルを手放したくない。だから、一人娘を人質に取る形で、彼女に決断を迫る。


女と別れ、夫婦として生活をすれば、娘と離れずに済むぞという脅し。


けれど、彼女は夫を愛してはいない。自分が女性を恋愛の対象にしているのだと自覚した時、彼女はキッパリと夫との生活に区切りをつけた。


でも、当時の世間や夫、義父母には彼女の真実はけして理解されない。一種の精神的な病気だと思われ、治療さえすれば治ると思っている。


こんな偏見の中で、彼女は必死に立っている。


そんな時にデパートのおもちゃ売り場で出会ったのがテレーズ。彼女は若く、自分の夢を静かに心に抱く女性。


売り場に忘れたグローブを送り届けたことが縁で2人の交際が始まる。


微妙な空気と距離の中で、お互いを求めていることを認め合う2人。そこまでの時の重ね方が丁寧に描かれていて、変ないやらしさがない。


ただ、互いに女性だったと言うだけで、深く愛しあい、理解し合う姿は男女の恋人となんら変わりがない。


しかし、夫が最後の手段に出たことで、キャロルはテレーズを巻き込まないために別れを告げる。


家柄とか仕事とか国籍とか、そういう類の壁でなく、彼女たちに立ちはだかる壁は世間の無理解と偏見。


どうしようもない壁の高さに1度は距離を置くけれど…


純粋に相手を思う気持ちに突き動かされた2人の選択は…


ラストの様子を見れば、想像はつくけれど、映画では描かれない。そこが良い。


私が思った通りなら、この2人の人生の選択はいばらの道を行くものだろうけれど、自分に正直に生きようとする確固たる決意が表れているようなケイトの瞳がなんともいえない余韻を残す。