今日も徒然、中洲日記

ほどほどに映画が好き。ほどほどに食べることが好き。日々気づいた事を綴ります。

ディーパンの闘い


試写にて鑑賞。


時々、出演者や内容に関わらず、予告編やネット情報でなんとしても観たいなぁと思う映画がある。そんな映画に限って単館上映だったり、我が家的にスケジュール上の無理がある上映館だったり。


この映画は上映館自体はシャンテで都合良いのだけど、相方誘って観に行くタイプの作品じゃなくて、どうしようかなぁと思ってた。


そういう映画が毎年何本かある。でも、結局時間を無理矢理作って昼間に自分で観に行く(けして多くない)か、WOWOWで放送するまで待つ(ほとんどこっち…涙)ことになる。今回はそんな映画を試写で観ることができた。


しかも会場は公会堂じゃなくて、一応劇場、渋谷のユーロライブ。感謝感激だ*(^o^)/*


ちょっとだけ事前学習をした。スリランカで起きている内戦(ここは多分…汗)を材に取り、家族を失った者同士が新天地を求めて、偽装家族となって、海を渡る…


今も世界のあちこちで紛争が起きている。日本で報道されるのはそのうちの僅かだと聞いたことがある。まさにその知らない紛争で傷ついた人々の話だ。


実際、劇中でも主人公の偽装妻がどこから来たかと問われ、「スリランカ」と答えても、インドと誤解される場面がある。本人は分かるように例えをもって説明するが、聞いた側にはテキトーにあしらわれる。


結局、みな目の前のことで精一杯。自分の世界を超える部分には無関心。そうした人々の中に命からがら逃げ延びた主人公たちの危うい日常が描かれる。


偽装された他人のパスポートでその人物に成りすましてフランスに渡る主人公たち。移民用に用意された住み込みの仕事は郊外の団地の管理人。


そこは若いギャングたちが牛耳る団地で、あまりに治安が悪く工事を中断した棟がある。


そうした、劣悪で恐怖と背中合わせの住環境の中、主人公ディーパン(これが貰った名前)は淡々と仕事をこなしていく。


微妙な空気の偽装家族。互いに生きるために一つ屋根の下に暮らすが心が通じてるわけではない。ホントは心の拠り所を一番に求めているのに…


白昼に起きる発砲事件。母国で過酷で非情な戦いをしてきたディーパンは武器を持たない生活を守るためにある行動に出る。それまで必死に抑えてきた彼の中の怒りがふつふつと。


偽装妻が家政婦をする家が襲撃された時、その怒りは頂点に達し、武器を手にする。


そこからはスクリーンに目が釘付けだ。これほどの怒りを内に秘めていたのかと。国での戦いがどれほどであったのか感じ取ることが出来る。


ただ、その場面、雰囲気でしか分からない。スクリーンには彼の行動が映し出されはするが、彼の後ろ姿を追う形で進んでいくのだ。でも、もちろん、彼が何をしているかは十分に伝わってくるのだが…


そして、偽装妻を救い出す。彼らはしっかりと抱き合い、本物の家族に…


ここで終わると思ったのに、ラストが用意されていた。このラスト、観る人によって、その捉え方がずいぶん違うんじゃないか…


あれだけのことして、無事じゃ済むまいと思えるディーパンにそんな日は来るのか。ディーパンの思い描いた夢ではないのか。私は「えっ‼」と思って、エンドロールを迎えた。


上映後、トークショーがあった。映画監督の山下敦弘さんとドキュメンタリー監督の松江哲明さんのトーク。作品に関する感想を聞かせてくれたが、山下さんがラストに対して「違和感」と。


そうか、私もそれなのかと。


カンヌでパルムドールを取った作品です。お2人の話によると今年は佳作が多く、その中での受賞だとか。


冒頭の映画の流れは過酷な運命に翻弄させる重い重い映画を想像させるが、ラストがある意味想像を超えているので、お腹いっぱいな感じだ。


東京はシャンテで上映なので、上映館数は少ないかもしれないが、是非ご覧あれ。ちなみに監督は「預言者」の人で〜す(*^-゚)v