TOHOシネマズ・シャンテでの上映なので、最初の週に行かないとスクリーンの条件が悪くなる。で、GW初日に観に行ってきた。
実はこの映画も初日だったのだが、有楽町ではアカデミー賞受賞作品の公開が相次いでるからなのか、休日だと言うのに半分ほどの客入りで留まっていた。
残念だなぁ。監督はガス・ヴァン・サントで、マシュー・マコノフィーとケン・ワタナベの共演だと言うのに…
でも、まぁ観終わって、これも仕方ないかと思ってしまう。出来の善し悪しでなく、地味な作品だから。
人生にピリオドを打つためはるばる異国にやってきた中年男の再生への物語を淡々と描いていて、派手なアクションもなく、衝撃的なストーリー仕立てでもないこの映画は静かに観る方がぴったりとくる。
主人公がなぜわざわざ飛行機に乗り、日本の富士の樹海に足を踏み入れたのかは、追々と映画の中で語られる。
数年前の主人公の浮気が元で不協和音の響く家庭。主人公と妻は、お互いに不信と疑惑と悔恨に身動きが取れなくなっていた。そんな時、妻の脳腫瘍が見つかる。
死への不安が目の前に立ちはだかったことで、それまで2人の中にあった疑念も不信も全てが凍結状態に。それは消えて無くなったわけでもなく、ただ保留になったのだ。
妻の病気がヤマを越すまで、全てを先送りにした2人。手術後、腫瘍が良性だと診断され、ヤマを越えた。そして、新たな気持ちで2人が手を取り合い、療養のために転院する道中、悲劇は起こり、彼らの喜びは一瞬のうちに消え去る。
何もかも保留のまま妻は逝った。互いの不信を払拭し、新たな出発の日となるはずだったその日に…
主人公の喪失感はより深くなった。
彼の心を捉えた富士の樹海。立入禁止のロープを乗り越え、深い森の中へ進んでいく。
道に迷った先で、先に逝った多くの人々に出会う。彼が覚悟を決めた時、出口を探しながらさ迷い歩く男で出会う。
名前は「タクミ・ナカムラ」、流暢な英語を話し、妻の名は「キイロ」、子供の名は「フユ」と言った。
彼の手首には幾つものためらい傷が生々しい。主人公は、ヨレヨレで傷だらけのナカムラを介抱し、励ましながら、彼の望む出口へと道を共にする。
しかし、確かに出口に続いているはずの道が途中で途切れていたり、知らぬ間に森の奥深くに入り込んでいたり。
彼らは深い森の中で幾つもの危険と遭遇する。それでも、ナカムラの生きたいという思いに負け、前に進む主人公。
とうとう力尽きたナカムラをその場に残し、主人公は助けを呼ぶために自ら出口への道を歩きはじめる。
幾つもの幸運と幾つもの奇跡が主人公に訪れる。傷だらけの主人公は病院に搬送され、一命を取り留める。
すっかり回復した主人公が再び森へ向かった時、横たわるナカムラにかけたコートを見つける。そこには1輪の花が。
主人公が帰国し、職場復帰した後で、ナカムラの語った言葉の意味が分かる。何を伝えるためにナカムラがあの場いたのかが分かった時、静かな感動が…
ファンタジー映画なんですよ。サスペンス風に話が進んでいきますが、ファンタジーなんです。
途中でケン・ワタナベの立ち位置が分かってしまうので、ちょこっと残念だけど、ケン・ワタナベの言葉の意味も途中で分かっちゃうんだけど、「あぁ、そうなのね」と思う場面がちゃんと用意されていて、納得なのだ。
樹海を望むシーンでスクリーンの一角にでも良いから、富士山の姿があれば良かったな。広大な樹海に富士の姿が無いと海外で撮影したのねぇと思ってしまって(汗)そこは残念だったな。