やっと観に行くことが出来ました。上映回数も上映期間もとことん私の都合に合わなくて(涙)、メイン上映館の渋谷アップリンクに足を伸ばしてみました。
初見参のアップリンク。時々出かける渋谷Bunkamuraの先。駅前の喧騒からは想像も出来ないほど、落ち着きを持った辺り。ちょうどオフィスビルと住宅街の変わり目の辺り。
小さなオフィスビルと思しき入口を入った先に小さなカウンター。
当日券は整理番号札を渡され、開場まで待ちます。1階にはカフェ、2階には上映作品の関連商品や映画関係の書籍などが並ぶショップ。
ロビーや廊下などけして余裕のあるスペースではないけれど、必要十分の施設だなぁと。
スクリーンは小さいけど、見やすい座席配置。映画の配給もしてるこだわり館なので、実際に行ってみるまで私には敷居が高い劇場だったけど、ちょっと気に入ってしまった。
さて、本編。
青年が高いコンクリート壁に垂れ下がったロープに飛びつく。途中、彼が壁を越えるのを阻止しようと狙撃されるが、そんなこと意に介さず、彼は目的地へひた走る。
壁はパレスチナ問題の象徴。壁の向こうとこちら。自由を制限するだけでなく、彼らの人生をも左右する壁だ。
オマールは壁を越え、ある家のドアを叩く。幼なじみに会い、彼らの目的を為すための話し合いだ。その兄のように慕うウタクの妹こそオマールの思い人。
愛あればこそ、オマールは高い壁に取り付き、命懸けで越えていくのだが、これはパレスチナ人たちを包囲する壁であり、オマールはその外側にいる人間なのか、あるいは生活のために壁を越えて働きに行くのか…
何度も話し合いを重ね、オマールたちが襲撃したのは敵対する組織?秘密警察?
秘密警察から追われる身となった仲間たち。オマールも逮捕され、拷問を受ける。それでも、口を割らない。
秘密警察からスパイになるように取り引きを持ちかけられるが、彼は応じるフリをして、幼なじみたちを守ろうとする。
そんな彼の思いも知らず、仲間たちや愛する女性にまで裏切り者と疑われる。
オマールには分断の壁だけでなく、仲間たちとの間にも心の壁が立ちはだかった。
疑惑、不信、オマール自身が仲間たちの中で自分の場所を見つけられなくなり、彼らとの距離を置くようになる。
ところが、彼が信じていた仲間や警察の言葉はどれもこれも自分を罠にはめるものだったことが分かる。ただ1人だけ最後まで信じるべきだった女性を突き放したのは他の誰でもない、オマール自身なのだ。
彼女の最後の手紙さえ読んでいれば…
どんなに悔やんでも悔やみきれない思いを断ち切るため、彼は最後の選択をする。
若く、愛する人のために気力が漲っていた時はなんなく越えられた壁が、様々な裏切りや不信を経験した後ではとても越えられそうにない高い壁としてオマールの前にそびえ立つ。
純粋な心が折れた今の彼を象徴していた。
政治的に大きな問題を含む壁すらも映画の舞台として描いていくこの地の人々の日常に目を開かされる。