台湾映画界って、若き日のキラキラした思い出を巡る物語を映像化する才能が溢れてるのかって。
昨年だっけ?すごく評判になった映画あったよねぇ?
見てないし、タイトルも思い出せないけど、話題になってた。
今回はミュージック・ビデオで名を馳せた監督の長編デビュー作だとか。
コンサート会場で主人公の少女が美しい音色に心をときめかせている時、隣に座る美しい母は別なところに心を奪われていた。
少し前の席に座る男。彼は母の初恋の人。高校時代、突然街を去った彼はあの頃と変わらない姿でそこにいる。
知らない女性と寄り添って歩く後ろ姿を見送る母…
離婚して、祖母と母と3人で暮らす主人公。同級生の男子から何かと声をかけられるが、素直になれない彼女は少し突き放していたりする。ところが、その事が後に彼女の心を傷つけることになる。
ある日、ノラ猫にエサやりに出かけた母と主人公。猫を追って飛び出した母は事故にあう。
意識の戻らない母。
母の未送信メールを見つけた主人公は、母を騙ってその相手とメールでやり取りする。
17歳の主人公の日常と母が17歳の頃の日常が交互に綴られていく。
私は既におばさんなので、やっぱり母親の17歳の頃の淡い思いを抱いていた日常は心に響いた。携帯も無く、メールも無い時代。お昼だって、弁当屋で買うんじゃなくて、家から弁当を持っていった。何もかもがアナログの時代。
音楽だって、レコードで聞いた。映画の案内板だって、手書きの絵だ。
今では心の片隅に追いやられてしまったキラキラと輝いていた若き日の思い出。それらを美しい映像と音楽で彩っていく。
あぁ、こういうストーリー、好きな人は好きよね…と、すっかり日常のアカにまみれた心が拗ねた感想を抱く(^▽^;)
母が眠り続ける傍らで、主人公の日常は大きく揺らいでいく。淡い思いを抱きながら、素直になれなかった主人公は親友がその相手の少年へ同じ思いを寄せているのを知る。
彼女はそれを裏切りだと感じる。
眠り続ける母や主人公のこれからを心配し、上海から離婚した父が訪ねてくる。しかし、父にも既に新しい生活があり、家族がいる。
彼女はそれすら裏切りと感じ、どうしようもない行き場の無い思いに苦悶する。
そして、メールの相手と会うことに。最後に会った17歳の母と同じ顔をした少女が目の前に現れ、男は呆然とする。
学校を退学後、香港に行き、そのまま帰らなかった台北に久しぶりに戻った男。結婚への踏ん切りがつかず、同棲していた女性からも愛想をつかされ、別れたばかりの男。
彼に新しい道を開いたのは、他の誰でもない初恋の人の娘だった。
母はこのまま眠り続けるかもしれない。それでも、彼女は男に問う。「お父さんになって」と。からかうように笑う少女の顔がとても幸せそうだった。
そして、眠る母を見つめる男。
ラストは母の目覚めを予感させるシーンで幕。
全体として、映像がとても美しい。ストーリーはまぁありがちで、感情移入できないと全く別世界のお話に感じるかもしれないけど、観終わってからジワジワくる映画だな。
水溜りにバチャーンって飛び込むとこや学校で没収されたレコードを腹いせに投げ飛ばすシーンなんて、ホントに美しい。今どきの子はやらないことばっかり(^▽^;)そこを美しく見せるっていうのは監督の「思い出」への強い思い入れなのかな?
心が疲れた時に観ると良いかも…
新緑の爽やかな風景が心洗うエンドロール。確かに「若葉のころ」がそこにあった。