今日も徒然、中洲日記

ほどほどに映画が好き。ほどほどに食べることが好き。日々気づいた事を綴ります。

王の運命(さだめ)


韓国の王朝物をシネマート新宿で鑑賞。「若葉のころ」を観にシネマートに行った時、ちょうどこの映画の初日で、ロビーが見たことないほど混んでたんだけど、まだ数日しか経ってないのに、大きなスクリーン1での上映は2回だけになってしまっている。どうしたの?と思ったので、ひとまずスクリーン1で観られるうちに参戦‼


本日もかなりの混雑。真ん中より後ろは結構入ってた。ちょっとびっくり(⊙_⊙)


で…確かに王の運命を描いた映画ではあるが、邦題はもっとなんとかならなかったのか?というのが最初の印象。


米櫃事件で命を落とした思悼世子(サドセジャ)を題材にしたので、原題は「思悼」


韓国では誰もが知ってる王朝に暗い影を落とす事件なんだろうから、このタイトルで十分意味が通じるんだろう。日本で言ったら、なんだろう?


確かにそのまま日本では通じないタイトルかもしれないけど、「王の運命」は無いよなぁ〜と思ってしまいましたm(_ _)m


で、本編。雨の中、王の住む離宮に刀を持って向かう王子とその配下の武官たち。ただならぬ雰囲気の王子は王の離宮まで行き、手を止める。彼のもう一歩で国は姿を変えてしまうところだった。


そんな緊張感漂うオープニングから始まる本作は、その後王子が処罰として米櫃に閉じ込められ、遺体となって外に出されるまでの8日間を中心に描いたもの。


なぜ王子が王に刃を向けたのか、なぜ王は苛烈な処罰を押し通したのか。そこに至るまでの経緯も合わせて語られる。


誰が見ても、王が課する処罰に大義は無く、それまでの王と王子の月日を知る者は何事にも自分が正しいと信じたことに徹底的に突き進む王の厳しさが呼んだ結果だと知っている。


そんな中で人の心に重きを置いた世の中を理想とした王子は自分を見失っていく。


継承者として「王子」と任ぜられた世継ぎは、親子でありながら、寄り添って生活することをしない。早くから一人前の大人として扱われ、多くの勉学や処世術を学んでいく。


そこに子供ながらの自由など入り込む隙もない。王の猛烈な期待が王子を追い込んでいき、意に沿わない王子の姿に王はあからさまに落胆し、王子は恐怖の対象として王を遠ざけていく。


こうした思いが積もり積もった結果、1人の王子が歴史から葬り去られる。


強烈でした。王位を巡って、親族で争うことは日本の武家社会でもよく見られるものだ。例えば、北条政子とか…


でも、これほどに苛烈な出来事は珍しいのでは…


祖父と父との確執を自らの目で見て育った息子こそ、イ・サン。


彼にとって、父はどんな存在だったのか。父が刃を持って王に対峙しようと離宮に向かったその時、王と向かい合って語り合っていたのはサンだった。


まだ小さな彼が王に問われ、父の思いを継承する言葉を口にする。王はどう思ったか。


処罰の一切を引き受け、世を去った父。父の側を離れないサンに向かって母が言う。今すぐ王の元へ行けと、そして、王位を継承し、父の無念を晴らせと諭す。


なんと哀しい家族の物語。派閥や血縁に左右される王宮の闇がどれほどかと。


主人公の王子を演じるユ・アイン君が素晴らしい。凛々しい王子の顔が徐々に悩みに蝕まれていく様、心の均衡が崩れていく、時々刻々の変化。見事。


名優ソン・ガンホssiを相手に堂々と演じていた。


さらに驚かされたのは、サン役の子役の男の子。特別出演として名の上がっていたソ・ジソブssiが大人になったサンとしてラストに登場するが、それまでは子役ちゃんがしっかりとサンを演じきる。どこかソ・ジソブssiに似た面立ちの彼だからこそ、ジソブssiの登場が納得できたとも言える。こちらもお見事。


ホントに韓国映画界は、子役にもかなりの要求をしてるようで、毎回驚かされる。それに見事に答える彼らのすごさにも圧倒される。


単なるお家騒動としてでなく、家族としての繋がりやそれぞれの思いが通じない王朝という迷宮の哀しさを描いていて重厚で見応えがあった。


観てよかった。