クリストファー・プラマー主演、監督は「デビルズ・ノット」のアトム・エゴヤン。試写にて鑑賞。
もう、「デビルズ・ノット」の物凄い緊張感を思い出したわ。あの系統です!!
1時間半ほどの上映時間中、ほとんど集中を途切れさせることなく、真剣に観入ってしまいました。内容も緊張感がハンパないので、上映後の疲れはいつも以上。
お話は老人ホームで目覚めた主人公が妻を呼ぶところから始まる。彼は認知症を発症しており、記憶があやふやで時々自分がどこにいるのかさえわからなくなる。
長年連れ添った妻を1週間前に亡くしたばかり。そのショックが彼の認知症をさらに深刻にしていた。
そして、妻のお別れの会の途中で席を外した彼は誰にも秘密の最後の目的を遂行するため、ホームを抜け出す。
ホームで出会った昔馴染み。彼はすぐに主人公をわかったのだが、主人公ゼウは気がつかない。そこが重要なポイント!!
70年ぶりに出会った男は、ゼウと同じ収容所にいた。彼らの家族はナチに殺された。彼らは数少ないアウシュヴィッツの生存者だ。
男は、戦後に戦犯として裁かれたナチ党幹部だけでなく、実際に収容所で手を下していたナチ党親衛隊員も裁くべきだと考え、戦後の混乱に紛れて、死んだ捕虜の名前を語って、外国へ逃げ出したナチを捕らえる仕事を手伝ってきた。
自分もとうとう車椅子での生活になり、身を潜めているナチを探し出すことは難しい。そんな時にホームで出会ったのがゼウだ。
妻が死んだら、家族を殺したナチを探し、復讐する旅に出ると誓っていたゼウ。
認知症のため、記憶が飛ぶゼウのために復讐旅の行程を詳細に記した手紙を用意し、ホームでゼウの成果を待ち続ける。
認知症による記憶の不確かさによって、主人公の姿はどうにも不安。
それがまた、ハラハラドキドキを、緊張感を高めていく。
そして、目指す男を見つける前に、未だにナチを信奉する男に出会い、襲われる恐怖から殺してしまう。
別人を殺してしまった主人公だったが、復讐旅を止めることなく、最後の1人を訪ねていく。そこがすごいな。あやふやな記憶ながら、家族を殺された復讐を遂げるのだけは強い意思で遂行しようとする。
そして、それがラストの衝撃を生む。確かに衝撃的なんだけど、なぜそうなったのか、誰がそうさせたのかと考えると、ヒトラーの行為がどれほどの人々に深い深い傷を負わせたのかを強く感じる。
その深い傷は時間とともに消え去ることは無く、人々の記憶にも刻まれているのだ。だが、人間は年を重ねるなかで、「記憶」が曖昧になっていく。そこに重要なポイントがあって、復讐劇にもかかわらず、静かに展開していった物語がラストで弾ける。
第2次大戦でユダヤの人々が受けた仕打ちがいろいろな形で映画化されているが、私はこういう展開の映画を観たのは初めてだ。
是非、劇場で。