今日も徒然、中洲日記

ほどほどに映画が好き。ほどほどに食べることが好き。日々気づいた事を綴ります。

ニコラス・ウィントンと669人の子どもたち


試写にて鑑賞したドキュメンタリーです。


初めて飯田橋の「神楽座」に。これまでにも角川書店の試写室での試写会に参加したことはあるけれど、こちらはもっと駅よりの新しい角川書店ビルの1階。広いガラス張りのロビーの奥にある神楽座。ロビーで開映待ちの時間にちょこちょこっと食事をしようと思ったら、試写会のスタッフさんに注意されてしまいました。


ロビーでの飲食禁止なんですって!!場内はもちろん禁止だろうから、今後、こちらの試写会に当たっても、食事の件は悩ましい╮(๑•́ ₃•̀)╭


さらに、ロビーに置かれた椅子に腰掛けてた人も「試写会の人は奥に」とビルの受付の人に席を空けるように注意されてたし…


角川書店の業務上の問題なのか、一般にも貸し出してるオフィスビルだからなのか、あれこれ制約があって、面倒な試写会場でした。綺麗だし、駅からも近いのに残念だな。


でも、映画は良かったです。


第二次大戦中の様々な出来事。戦後70年を経て、やっと世間に認知された事も多く、今回の映画でも厳しい条件下での命を救う取り組みの1つのエピソードが綴られる。


当時の記録や記憶を元にした再現ドラマも含みながら、当時の映像や書類、さらに当事者たちの証言でニコラス・ウィントン氏の活動状況が明らかになっていく。


ヨーロッパでヒトラーに率いられたナチが台頭し、不穏な空気が漂うようになった頃、ニコラスはイギリスの投資会社で働き、大きな実績を残し、裕福な暮らしをしていた。


そんな彼がナチの台頭に怯えるチェコの人々に手を差し伸べることになったのは、ある1本の電話を受けたから。


一緒にスキー旅行に出かけようと計画していた友人からの電話だった。彼の住むチェコで、ユダヤ人たちが迫害される危険が迫り、その救援のために旅行をキャンセルするというものだった。


ニコラスはその電話でスキーを中止し、チェコへ向かう。そして、厳しい状況に追い詰められていくチェコの人々を目の当たりにする。


既に家族で出国する時期は過ぎ、ヒトラーがいつチェコに乗り込んでくるのか時間の問題となった時、せめて子供だけでもという親たちの思いをニコラスは拒むことなどできなかった。


仕事もそっちのけで、彼は子供たちの出国のために奔走する。出国を希望する子供は何千人もいた。しかし、戦争が始まってしまえば、移動手段が途絶えてしまう。限られた時間の中で精一杯の手配を続けた。


669人の子供たちをイギリスに送り届け、里親の元に預けたニコラス。彼は里親たちを信頼し、彼らに預けた後は一切会っていない。だから、当時の詳細な記録も物置にしまい込んで、自ら語ることも無かったのだ。


なぜ自分たちはイギリスに送られ、里親の元で命を救われたのか、誰が手を差し伸べてくれたのか知らずに育っていった子供たちが大半だった。


ニコラスの家の物置から見つかった記録で、その全てが明らかになった。


ニコラスの妻でさえ知らなかった、彼の行動。その資料を元に連絡がついた子供たちは半数ほど。ニコラス存命中に直接彼にあって、命のお礼を伝えるかつての子供たち。


彼に救われた人々は、当時の切迫した状況と不安の大きかったイギリスへの旅などを語り継いでいる。


こうして、記録として残していくことの意味を感じる。1人の勇気が多くの命を救ったのだと…


是非とも観ておきたい1本。


最近公開されてる第二次大戦中の様々なエピソードを扱った映画は、ドイツを中心にホロコーストの舞台となった国々の話が中心だ。チェコにもこんな事があったのかと知る機会にもなる。そして、なぜチェコが近隣諸国との繋がりの中で孤立していったのかも分かる。


ニコラス・ウィントン氏の人柄には特に心を打たれる。人の出来ないことをして、多くの命を救ったにもかかわらず、傲り偉ぶる様子が無い優しい笑顔の1人のおじいちゃんだったことがなにより胸を打つ。