今日も徒然、中洲日記

ほどほどに映画が好き。ほどほどに食べることが好き。日々気づいた事を綴ります。

未来を花束にして


試写にて。原題は「suffragette(サフラジェット)」。20世紀初頭の婦人参政権論者のことを示すらしい。


時はまさに1912年のロンドン。洗濯工場で働く若き女性が主人公。


彼女はその洗濯工場で働く母の元に生まれ、父を知らずに育った。7歳で洗濯工場のパートに就き、14歳で社員になった。20歳の時には主任になったが、彼女の仕事は一向にかわらない。


同僚と結婚した後も働き続けた主人公モーグ。実際に洗濯をする彼女たち女性は蒸気に溢れた場内で空気も悪く、過酷な労働を休みなく課せられた。


火傷や肺を病んで働けなくなる女性は多く、年齢を重ねると、とても働ける職場ではなかった。そこまでして働いても、配達中心である程度自由がきく男性とは賃金の差があった。


そんな中で、女性の立場向上に立ち上がる女性も少しずつ増えていく。


主人公は女性側の働く現実を社会に訴える公聴会に参加し、友人の代わりに証言台に立ったことをきっかけとして、別の人生があったのかもしれないと思い始める。


それまでは過酷な仕事をしながらも、貧しくとも夫と小さな息子との暮らしに満足していた。


でも、息子には未来は開けるかもしれないが、もし娘が生まれていたならどうだったろうと考え始める。


自分と同じ人生は歩ませたくない。彼女は母として、毅然と立ち上がる。


メリル・ストリープ演じる活動のリーダーが逮捕されると主人公たちは最後の手段と国王に直訴することを考え始める。


国王が国民の前に姿を見せるダービーの日。パドックで自分たちの思いを伝えようとするが、厳重な警備に阻まれ、近づくことすら出来ない。


共に競馬場に向かった活動家のエミリーは、突然レース場に飛び出し、命を賭して世間の注目を集める。


彼女の葬列には全国から志を共にする多くの女性が集まってくる。


こうした、女性が参政権を得るまでの実話を1人の市井の女性の視点から描いていく。


参政権があることすら考えたことも無かった女性が、自分の置かれた立場に目を向け、将来生まれくる多くの女性たちが少しでも差別の無い世の中で暮らせるよう立ち上がっていく。その過程で彼女の目の色が変わっていく。


自信の無い、何かに怯えたような目をしていた彼女が決然と立ち上がる姿は胸を打つ。


1人のヒロインの活躍で手にした勝利ではないと。多くの普通の女性の叫びが世に変化をもたらしたのだと。


活動のリーダーの背景はほとんど語られない。また、競馬場で亡くなった活動家エミリーについてもモーグが活動に参加するようになって出会うので、歴戦の闘士だということしか分からない。そのため、2人の登場には唐突な感じを持ってしまうのがなんとも残念。


ただ、歴史的な事実を学ぶ機会にはなるので、女性は観ると良いと思う。今、自分たちが当たり前に手にしている権利は、多くの先人たちの苦労と闘いの末に得たものだと。。。