今日も徒然、中洲日記

ほどほどに映画が好き。ほどほどに食べることが好き。日々気づいた事を綴ります。

沈黙 −サイレンス−


アカデミー賞のノミネート発表があった翌日に鑑賞
。残念ながら、作品賞などの主要部門でのノミネートはなかった。初回で観てきた。日本の小説が原作だし、多くの日本人俳優が出演してることもあって、注目度は高い。


午前10時の映画祭でもないのに、結構な出足。


実話ではないけれど、確かにあの時代にこんな事があったのだろうという感じの映画なのかな?確か、学生時代に国語の教科書に載ってたような、なかったような。。。


というくらいなので、原作は未読。それでも、特に困ることは無い。


あちこちのレビューで目にした通り、当時の日本の描き方に違和感は全く無い。日本人の監督が撮影したと言っても誰も不思議に思わないレベルだ。


そんなところにも、スコセッシ監督のこの映画に対する思いの深さを知る。


鎖国していた日本に何年もかけて辿り着き、キリスト教の布教に力を注いだ宣教師。しかし、為政者たちは、農民たちが日本の伝統的な宗教観とは違うものを信仰し、自分たちの統制が取れなくなることを危ぶんだ。


歴史の教科書で学んだ隠れキリシタンとかの時代。


リーダーである神父は、自分が転向しないことで、自分の弟子や信徒たちが迫害を受け、挙句は残酷な仕打ちで命を落とすのを見続ける。そして、彼らの命を守るために棄教する。


生き死にさえ不明になった師匠を探して、2人の若い神父が危険を冒して海を渡り、日本に辿り着く。


彼らは貧しい農民たちの希望となるが、奉行はそれを許すはずがない。


こうして、若き神父は1人は命を落とし、1人は師匠と同じ道を歩む。


そこに至るまでの彼らを丹念に描く。棄教し、亡くなった日本人の名前を引き継ぎ、家庭をもった若き神父は、海外から、キリスト教に関する物が日本に入り込むのを水際で阻止するために貿易で取引された品物を1つ1つチェックするのが仕事だ。


海外からやってきた貿易商の目にも彼が背教神父であるのは疑いなく映る。一切、キリスト教との関係を断ち切って生きる彼の姿に驚きさえする。


日本人として、生き抜いた彼の最後で映画は終わる。


長い、とにかく長い映画。若き神父が日本にやって来てからというもの様々な出来事があった。それらを丹念に追うし、話の流れに特に無理なところも感じられないほどの丁寧さ。長尺も仕方ないと思う。


そんな長尺も気にはならないけど、明るく楽しい映画ではないし、暗く重い流れで、笑顔などまるで見られない。


特に信徒たちが奉行から拷問を受けるシーンは目を背けたくなる。暴力的な描写というより、人間としてどうなのかと思う、おぞましい仕打ちだ。神父たちの心を追い詰めていくやり方が、汚い。奉行役のイッセー尾形のイヤらしい笑顔がまさに物語ってる。


日本っぽいっていうより、アジアっぽい感覚だろうなと思ってしまう。粘りつくような悪意。。。


ハリウッド映画でこういうのを描くのはかなりの挑戦だったろうなと。。。


そして、日本人俳優たちの熱演をぜひご覧あれ。浅野忠信窪塚洋介、さらには塚本監督(今回は俳優さん)の存在感は凄いぞ。


WOWOWアカデミー賞のノミネート放送で、イッセー尾形助演男優賞ノミネートがあるかと話題になってた。でも、特に印象的な役ではなかったように思うけど、私は。確かにイヤらしい役で、彼ならではの演技だと思う。でも、主役を喰うほどのパンチは無かったように思った。


でも、いずれにしろ、ご覧あれだ〜!!