今日も徒然、中洲日記

ほどほどに映画が好き。ほどほどに食べることが好き。日々気づいた事を綴ります。

ニュートン・ナイト 自由の旗をかかげた男


試写にて。18:30開映の試写会、エンドロールが終わって時間を確認したら21:00ちょっと前(⊙_⊙)長いことは知ってたけど、結構夢中で観てたから、気にならなかった。


ザ・コンサルタント」もそうだったけど、面白かったり、興味を引くものがあれば、長尺は気にならないという魔法(*^o^*)


夢中で観てたけど、その内容は暗く重い。内容の暗さだけでなく、前半は軍に追われた主人公が身を隠す場所が沼地の森だから、映像も暗い。その暗さは彼らの置かれた立場の象徴なんだろうか。


時は南北戦争の時代。この時代の背景を知ってた方が圧倒的に理解は深まる。私はその時代を描いた映画を通してしか、その頃の知識がないので、途中で差し挟まれる主人公のひ孫の裁判シーンは唐突に感じられ、理解するまで時間がかかった。


主人公の名を冠した映画。奴隷解放と綿花を争った南北戦争の頃に実在した人物の来し方を追う。


白人とて、全てが優遇されてたワケでなく、金持ちの大農園を営む者だけが優遇され、彼らの肩代わりのように貧しい白人たちが戦場で戦っていたのが現実。搾取される側の農民や物のように扱われた黒人たちの中から立ち上がったニュートン・ナイト。


軍から脱走し、追われる身となった彼は、最初、軍も足を踏み入れない沼地の森で農園から脱走した黒人たちと隠れていたが、いよいよ軍の横暴に耐えられなくなった農民達をも巻き込んで、自由の国を立ち上げる。


しかし、彼らの中にもまだ黒人たちへの差別意識はあって、農民と黒人の間には隔たりが存在したが、ニュートンはそんな意識をあっさりと打ち消す。


隣近所に困り事があれば、駆け付ける。自分が窮地に陥ろうと関係ない。権力の横暴を振りかざす者には断固立ち向かう。そんな彼にとって、農民も黒人も違いは無かった。


この時代に、こんなにフラットな価値観を持ち得た人物がいたというのがある意味凄い。親や身の回りの人々の価値観の中で人間は育つ。そこから育つ「認識」は時代の影響を受けやすい。ところが、彼にはそれが無い。


彼の強い信念は、人々の心を動かし、農民も黒人も1つに結びつける。それでも、疑心暗鬼になった古い価値観に囚われる人々が、軍の差し出した甘い罠にかかって、見せしめのように殺されてしまう。


ここで、立ち上がったのはいつも苦しい思いをじっと心に押し留め、家族を守ってきた女性たち。彼女達は銃を手に男たちと共に戦う。女性は強いんだ。


ニュートンたちの戦いと平行して、南北戦争の状況もモノクロ画像で差し挟まれ、ニュートンたち「自由の国」の人々の立場が向上していくかのように思っていたが、法制度だけ変わっても運用する側の意識が変わらない限り、彼らへの差別は続く。


実際に投票権を得た最初の選挙も恐怖に押されて投票所に行くことすら出来なかった人々がいた。


その差別が依然として続く象徴として、ニュートンのひ孫の結婚に関する裁判が差し挟まれたのだ。そこに理解が至る頃には映画も終盤だ。そして、差別との戦いに諦めかけたひ孫の青年は、決然と立ち上がる。ニュートンの血は強く流れている。


自分たちの子供が差別される事への不安から北部への移住を訴えたニュートンの妻(軍との戦いの中で信頼の絆を結んだ黒人女性。正式な妻とはなれなかった)。でも、ニュートンは今いる場所で生きていくと、火をつけられた家の場所で再建のために作業を始める。


ニュートンとひ孫の決然とした姿で終わる。エンドロールでモノクロ写真が登場するが、あれはニュートンなのか。。。


実話の持つ重み。そして、時代と戦いから見える彼らの苦境と希望。全編暗く重いけど、見る価値あり。