今日も徒然、中洲日記

ほどほどに映画が好き。ほどほどに食べることが好き。日々気づいた事を綴ります。

ラビング 愛という名前のふたり


静かな映画だった。人種差別に関わる内容の映画は「闘い」が中心になるので、どうしても激しさが表に出てくる印象がある。ところが、この映画は全くそう言ったところがない。


白人の男と黒人の女。男性の父親が黒人の雇い主の元で働いていた関係で、彼は子供の頃から黒人の世界で生きてきた。きっと、肌の色より心の色を見抜いて生きてきたのだろう。


冒頭、女性の実家で彼女の家族と共に暮らす男は女が妊娠したことを知り、とても嬉しそうに微笑む。そして、結婚を申し込む。


彼らが住んでいる州でなく、ワシントンまで出向いて結婚申請をし、証明書を受け取る。晴れて夫婦となった2人だが、彼らのことを良く思わない誰かの手によって、保安官に事実が伝えられる。


当時、彼らの暮らす州では異人種間の結婚は認められていなかった。白人の夫はすぐに保釈になったが、妻は身重でありながら、彼女の家族が保釈金を支払うまで、保釈されなかった。


冷たい牢屋に妻が捕らわれるのを絶対に避けたい夫は、判事から言い渡された判決に従い、ワシントンの親戚の家に身を寄せる。


同じ国なのに、人が社会生活を送る上で根幹となる「結婚」について、地域で判断が違うってどうなんだろう。それこそ、違憲ではないのか…人種差別については、中々簡単に解決を見ないことが多いのだな…


夫婦は、ワシントンで新しい生活を始める。田舎の広大な農地に囲まれた町で伸び伸びと暮らしてきた2人。特に妻は母親となり、窮屈な都会での子育てに疑問を感じ始める。そして、息子の交通事故をきっかけに、故郷へ帰る決意をする2人。


親戚だけしか知らない、農地に囲まれた野中の一軒家で子供たちと暮らす日々。2人はことさら声をあげることはないが、人権派弁護士の協力を得て、法廷への訴えは続けていく。


法廷シーンはほとんど無いので、とても重要な人の権利に関わる闘いの歴史の1部なのだけど、盛り上がりがあるワケでもない。


ただ、普通に愛しあう夫婦がたまたま異人種だったために歴史の真ん中に引っ張りこまれてしまったような…


まわりの人々から嫌がらせや無理解をきっと多く受けてきたに違いないけど、そういったシーンも少ない。


中心的な視点はあくまでも彼ら家族の生活する姿。妙な盛り上げもないし、淡々と進むので、少し物足りないかもしれない。


それでも、互いを守ろうとする夫婦の姿が涙を誘い、胸に迫る。歴史を変えた2人だが、英雄視されることを嫌い、インタビューにもあまり応じなかったそうだ。歴史を変える人って、こういう人なんだろうな。


良い映画でした。実話の重みを感じます。