試写にて鑑賞。素晴らしい映画でした。
まず最初に、確かに泣ける映画ではあるけれど、号泣というわけではない。打ちのめされるというか、衝撃を受けるというか、グッと胸が鷲掴みにされるような「泣ける」なのだ。
「奇跡」とはこういうことを言うのだと語られてるようなストーリー。1人の小さな少年が、兄とはぐれたために故郷から遠く引き離され、命の危険を掻い潜り、異国の家庭に養子として引き取られていく。多くの子供たちが路頭に迷う現在のインドの状況にあって、彼が海を渡って養父母の元へ旅立ったことだけでも、まさに奇跡なんだけど、ここからさらに奇跡は起こる。
成長し、自分の出自を語れないことに苛立つ主人公。たまたま、友人が思いつきで言った「Google earthで探したら?」という言葉が全てのきっかけだった。
25年前のボヤけた記憶が少しずつ鮮明に蘇ってくる。大切な息子だといつも抱きしめてくれた母、どこに行くにも一緒だった優しい兄、まだ年端もいかない小さな妹。母の仕事場までの通い慣れた道。兄と歩いた線路。家に帰る目印の高架下のトンネル。1人目覚めたホームから見えた給水タンク…
広大なインドの地図を前に、定かでない記憶を辿りながら必死でインドでの暮らしを探し出そうとする主人公。
しかし、インドの家族を探すことは、この25年なに不自由なく育ててくれた心優しい両親を裏切ることになるのではないかと思い悩む。
主人公から1年遅れて養子にきた「弟」は、当初から情緒不安定気味で、両親を困らせ、主人公をも不安にさせた。それは25年経っても大きな変化は無い。ただ、大人になって分別がつくようになった弟は、自分のことで、母が悩むのを気の毒に思い、別居していた。
そんな状況下にあって、インドの故郷を訪ね、実母や兄に会いたいなどと言えるわけが無いと主人公は、半ば諦めかけていた。
苛立ちがつのり、弟や恋人との関係も上手くいかなくなって、追い詰められていく主人公。ふと、Google earthを辿っていくと、記憶の奥深くに眠っていた景色が蘇ってくる。地図を辿ることで、時々の記憶と自分を取り巻く景色がまざまざと…
そして、彼はとうとう見つける。あの日、兄とはぐれた給水塔が見える駅を。そこを頼りに自分が住んでいた家まで辿り着いた。そして、彼は養父母に自分の故郷を見つけたことを伝える。
不安と期待。彼は記憶にあった場所を辿っていく…
生家を見つけ、ようやく母を抱き締めることができた主人公。長い長い年月。母の髪をすっかり白くなっていた。
これが実話だというのだから、驚きだ。本当のキセキをスクリーンで観た気になった。どれほどの幸運が主人公サルー少年の上に降り注いだのか。
そして、本編の後、さらに驚く情報がテロップで知らされる。それはインドでは現在も約8万人の子供たちが行方不明になっていると。探そうにも、サルーの母のように文盲で対処が出来ない場合も多いに違いない。なんとも悲しい現実だ。
そして、ずっとサルーだと思っていた主人公の名前について、どんなに調べても存在しなかった彼の住んでいた街の名前のように、思い違い(子供だから、言葉を正確に覚えていなかった)をしていたのだ。
そして、それがタイトルに繋がると知った時、こらえてた涙がこぼれ落ちる。これは間違いない。ストーリーとは別にすごいラストが用意されていた。
終映後、拍手が起きたのは当然のような気がした。
最高だったd('∀'*)