今日も徒然、中洲日記

ほどほどに映画が好き。ほどほどに食べることが好き。日々気づいた事を綴ります。

午後8時の訪問者


病み上がり、咳が出ないか心配だったけど、かなり集中して観てたからか咳も出なかった( ´͈ ᵕ `͈ )


地味に淡々と進むストーリー。でも、そこで確実に変わっていくものがあった。それは演出なのか、偶然なのか。。。


町の診療所が舞台。設備の整った都会の大病院ではなく、ご近所の人たちが集まる場所だ。長年、ここで診察を続けた老医師は入院中で、教え子に代理を任せている。


その教え子である女医が主人公だ。老医師は診療所を引き継ぐ医師を探している。彼としては教え子の女医に任せたいようだけれど、彼女は既に自分の診察室を与えてくれる病院に就職が決まっている。


そんな背景が少しずつ物語の進行と共に語られていく。


診療所の留守を任された女医は研修医を指導しながら、日常の診察を行っている。そんなある日の夜、既に診察時間を1時間も過ぎた頃にブザーが鳴る。


その晩、就職先のパーティに呼ばれていた女医はブザーに応じようとした研修医を止める。「こんな時間に来るのが悪いのだ」と。決断に迷いがあることを指摘された研修医はその晩、住み込んでいた診療所を出ていってしまう。


翌日、女医は時間外にブザーを鳴らした女性が亡くなったことを知る。岸壁で頭を打ったらしいが、事故なのか事件なのか判断はくだされていない。


女医は自分の責任を感じる。誰も彼女のせいだと責めはしないが、死んだ女性が身元不明のまま葬られることに納得がいかない。そこで、彼女は出会う人たちに女性の写真を見せて身元探しのような事を始める。


そのことで、死んだ女性に関わりがあった人間たちが炙りだされてくる。


医師はどこまで患者と向き合うべきなのか。果たして、医師は患者の思いに全て応えることは出来るのか。そうした普遍的な問いかけをベースに、女医が変わっていく姿を観る映画だ。


老医師からの信頼も篤く、若いながらも、立派に診療所を切り盛りし、研修医の指導もできる。彼女は優秀なエリート医師なのだろう。若き優秀な医師が診療所で出会った患者は、それぞれ問題を抱えている人たちで、これまで彼女が出会うことのなかった対極の世界の人々。


場所柄なのか、彼女は診療所の玄関を閉める時、自動ロックにも関わらず自分できっちりと鍵をかけていた。それだけ、物騒な町中なのか…


しかし、彼女が女性の死をきっかけに診療所を引き継ぐことを決めた頃から、玄関の閉め方が変わっていった。自らロックの確認をせず、自動ロックに任せるようになっていた。


最初から、扉を閉めるシーンが印象に残る映画だった。診療所の玄関だけではない。往診先の家の玄関や扉も。医師として、守秘義務の一環から診察する時は、たとえ患者の家であろうと扉をきっちりと最後まで自分で閉める。


患者を見送る時も診療所の玄関をきっちりと閉めていた。そんな扉の閉め方は彼女の心の扉と重なるような気がして観ていた。


彼女が死んだ女性の身元を探したことで、粟立ち始めた女性をめぐる人たちの揺れ動く姿。最終的に「真実」が明らかになるラストはよくあるパターンに収められてしまったようにも思うが、この結果がこれからの医師としての彼女の立ち位置を決めたようにも思う。


地味だけれど、人の成長を見る映画としてはジワジワとくる良い映画だった。