今日も徒然、中洲日記

ほどほどに映画が好き。ほどほどに食べることが好き。日々気づいた事を綴ります。

ドリーム


原題は「Hidden Figures(ヒデュン・フィギュアーズ)」。直訳すると「隠された人たち」。映画評論家の町山智浩さんによると「知られざる人たち」と言うことらしい。邦題、それで良かったんじゃん?


かつての強烈な黒人迫害は薄れてはいたが、町には厳然と白人と黒人を棲み分ける徹底した差別が根付いていた時代。さらに男女差別も厳然とあった。こんな厳しい時代背景の中、人々の就業環境にも大きな隔たりがあった。厳しい雇用条件に晒されながらも優秀な能力ある黒人女性たちが、ソ連との冷戦下で繰り広げられた宇宙開発競争に大きな力を発揮した。その実話を映画化。


当時、コンピューターが登場したばかり。宇宙計画にはどうしても数学が必要だ。機械のスピードに人間は適わない。当時、計算係として、細かい重要な仕事を担っていた黒人女性たちの職場が失われる危険もあった。その中で、彼女たちは機械だけでは成り立たない重要な部分をその優秀な人間力でカバーし、重要な戦力となっていく。


ソ連に先を越された有人宇宙飛行。追随するのではなく、追いつき、追い越すためにアメリカは全精力を傾けるが、なかなか上手くいかない。


何度も失敗を重ねながら、成功に導くために重ねられた努力と平行して、黒人女性たちの窮屈な立場が描かれる。黒人だから、女性だからと十分な能力がありながらも認められない彼女たちの苛立ちは当の彼女たちにしか分からないだろう。


そうした厳しい条件の下でも、彼女たちは仕事に誠心誠意打ち込んでいく。差別されるからと諦めたりしたら、彼女たちの後に続く子どもたちはどうなるのか。未来のためにも手を抜くことなく、果敢に挑戦していく。


組織の厳しいNASAの中で彼女たちの仕事ぶりが認められていく。世間に根付いた差別による偏見を抱いていた同僚たちは、間近でその仕事ぶりを見せつけられ、認めざるを得なくなってくる。凄いな、ホント凄い。


テーマから言っても、感動するのは分かっていたけど、予想を上回るものだった。


主人公たちの苦境を描いて涙を誘うのでなく、必死の努力が認められない彼女たちのもどかしさや悔しさに共感し、涙を誘う。そして、彼女たちの賢さにクスッと笑わされるシーンもある。ただ、暗く辛い差別の実情を並べるだけの話ではなかった。そこが、予想以上の感動を得ることになったのだと思う。なんとも爽やかな後味だ( ^o^)


紆余曲折ありながらも、彼女たちは仕事で結果を出し、それぞれの立場で貢献し、NASAでの第一人者として記憶と記録に残ることになる。


素晴らしいなぁ。そして、思いを馳せるのは彼女たちを育てた親たち。差別の中での子育ては苦労の連続だったことだろう。それでも、子どもたちが才能を大きく伸ばすことが出来たのは、何事にも負けない強い心をしっかりと植え付けたからだと思う。それはまた彼女たちが受け継いでいく。


科学の最先端で、大きな力を発揮した黒人女性の物語。こうした知られざる人たちの姿こそ映画で残さなきゃね。


数学しか頭に無い上司も良かったし、アメリカ初の友人宇宙飛行に果敢に挑戦した飛行士も良かった。彼らには偏見など無かったからね。偏見などに時間や心を割いてる時間なんて、無かったのだろう。それだけ、追い詰められた厳しい立場にあったのだと思う。ある意味、彼女たちに1番近い人たちだったのだろうな。


観に行って、良かった( ^o^)