今日も徒然、中洲日記

ほどほどに映画が好き。ほどほどに食べることが好き。日々気づいた事を綴ります。

50年後のボクたちは


監督は「消えた声が、その名を呼ぶ」のファティ・アキンさん。「ソウル・キッチン」とか「愛に帰る(正式タイトル忘れた…汗)」とか、全部見てるワケではないけど、好きな映画の監督さんでもある。


今回も大好き。はみ出し者の少年がひと夏の冒険を通して成長するという、まぁ定番中の定番物語なワケだけど。冒険が笑えないくらいハード。。。盗んだ車で走り出す〜って、歌っちゃいそう(笑)いやいや、リチャード・クレイダーマンだけど。。。


毎年、こういう作風の映画は公開されるが、毎回爽やかな後味で楽しませてもらう。こういうのって、昔の子ども時代の忘れ物(やり残したと勝手に思い込んでる様々な事…)を映画の主人公がやってくれてるように思っちゃうからかな。


父親の仕事の関係で町の豪邸に越してきた少年。町の人々はよそ者に寛容でなく、それだけでクラスのはみ出し者なのに、酒浸りの母親の事を面白おかしく作文に書いてしまう感性も受け容れられない。


そんなところに、これまたロシア系の少年が転入してくる。彼のチグハグな格好を見るだけで、はみ出し者第2号の登場だと感じる。


この2人の妙な友情から始まる冒険旅行。それはよく命があったなと思うハードな物で、車泥棒、ガソリン泥棒、人の畑を車で踏み荒らす等々、警察の姿を見れば逃げ出す嵐のような数日間。


でも、この数日間が2人の少年にその後の生きる道を与えたような気がするな。ただし、チックは50年先でないと、あの場所で再会する約束も果たせないかもしれないけど(汗)いろいろとね。


人はそれぞれの世界で生きている。自分を避ける「クラス」というちっぽけな世界では出会えない人たち。おじいさんだか、叔父さんだかが住んでるはずの地図に無い町を目指して、ひたすら南へ進む。


居場所を特定されないように携帯を捨て、飲酒運転で冒険が終わってしまわないように酒を捨て、ただ、そこにある道を進む。次第に運転が上手くなって行くのも芸が細かい。


見知らぬ土地で出会う人たちも自分と同じ「はみ出し」感覚を持ってたりする。それを知って、彼らは自分に自信がついてくる。その過程を映画で観る。


主人公を旅に誘ったチックとは、冒険旅行終着点の豚トラック横転事故現場で別れた。主人公が審判を経て、新学期を迎えるまでは描かれるが、チックのその後はエンドロールのアニメに登場。どこまでもタフな少年だ。


子どもたちの冒険が度を超してると思ってしまうと途端に興醒めしてしまうかもしれない。


普通にひと夏の冒険物語はあるけれど、彼らの冒険物語は確かにハード。だから、これはファンタジーだと思えば良いんじゃないかな。映画だからね(汗)って。


ステキな映画でした。