今日も徒然、中洲日記

ほどほどに映画が好き。ほどほどに食べることが好き。日々気づいた事を綴ります。

追想五断章


タイトルに知らない言葉があった。「断章」という言葉。調べてみたら、文章の一部分のことを言うそうだ。さらには、「断章取義」の略語としても用いられるそう。


「断章取義」の意味がまた面白い。「文章の一部分を抜き出して、自分の良いように解釈すること」なんだって。今のマスコミみたいね(^_^;)


この意味が分かってると小説の味わいもまた違ってくる。と言うことで、以下、感想。。。


追想五断章」米澤穂信著(集英社文庫)











ついこないだ読み終わった「真実の10メートル手前」と同じ米澤穂信作品。短編ではないし、連作ではないけど、5つの小さな小説を探す主人公の物語なので、どちらかという短編小説的な趣き。


父親の事業が行き詰まり、学費も払えなくなった主人公は、東京で古書店を営む叔父の家に転がり込むように居候生活を送ることになり、叔父の代わりに店番をする日々を送っている。


叔父と懇意にしていた学者が亡くなり、彼の蔵書の引き取りを依頼された菅生書店。まだ、持ち帰った箱も開けきらないうちに、その蔵書の中に探し物があると言って、若い女が訪ねてくる。


高額な報酬に目がくらみ、叔父に話を通さず、若い女の申し出を受ける主人公。


若い女の父親が遺したという五編の掌編を探すという依頼。その過程で、主人公は女の父親がある殺人事件と関連があることを知り、小説を探すことが、その謎めいた事件の真相を突き止めることに繋がっていく。


最後には、全ての掌編がつまびらかになり、事件の全貌が判明する。なんとなく、途中から事件の結末が読めちゃうのが、残念と言えば、残念だけど、謎解きミステリーではないので、仕方ないかな。


そこに至る過程の主人公と若い女の心の移ろいが、メインテーマだからね。まぁ、そこに視点を置くとなると、ちょっと主人公と若い女の存在感が弱い気がする。


でも、本作も一晩で読めるので、ちょっと時間の空いた時に気分転換には良いかも。