今日も徒然、中洲日記

ほどほどに映画が好き。ほどほどに食べることが好き。日々気づいた事を綴ります。

リバース


昨年だったか、TBSで放送したドラマ『リバース』の原作。基本ベースはしっかり押さえ、季節を冬にし、登場人物の人生も独自に描いたドラマだった。


結論は違うとそれらしいことは聞いていたので、原作を読んで、どう感じるか、自分でも楽しみだった。


「リバース」湊かなえ著(講談社)


以下、感想。。。

















事務機販売会社に勤める深瀬。田舎の学校では成績優秀だった彼が、その暮らしを飛び出して得た都会での新しい生活。けして、派手さはなく、人から見れば、特に印象に残らない彼にとって、大学のゼミで知り合った仲間は同じ立ち位置にいるはずの彼でさえ、眩しさを感じるほどだった。


それでも、限られたゼミという小さな世界で、それなりに互いに認めあっていた。


最終学年も半ば、学生時代の思い出にゼミ仲間の村井の叔父が持つ別荘を借りて、大いに楽しもうと出かけていった。


その先で、仲間の1人、深瀬にとっては初めて親友と呼べる仲間であった広沢が死んだ。


台風が近づく山の中、事情があって、後から合流することになった村井を駅まで迎えに行くため、慣れない山道を車で下っていった広沢。


途中、行き違いも難しいほど狭くなる山道。免許を取得してまだ日の浅い広沢。村井の到着を忘れたワケではないが、ビールを口にしていた仲間。


様々な要因が重なり、村井自身がタクシーで来るように伝えるという選択肢を敢えて選ばず、送り出した。


崖下に転落した車の中で焼死した広沢。運転の未熟さと悪天候から来る運転ミスとして処理されたが、別荘にいた深瀬を初めとする谷原、浅見、村井は広沢が僅かながらもビールを口にしていたこと知っていた。


互いに口裏を合わせたワケではないが、事故後の警察の事情聴取にも彼らは広沢の飲酒の件を話すことはなかった。


そして、3年が過ぎた。


「〇〇は人殺し」という怪文書が4人の生活圏に届く。広沢の死後、全員で連絡を取り合うことはなかったが、それぞれの範囲で繋がっていた。


なぜ、今になって、こんな文書が届くのか。誰にも思い当たる節は無い。広沢のことを親友と思っていた深瀬は、果たして自分は本当の広沢をどこまで知っていたのかと疑念を抱くようになり、広沢の両親を最初のとっかかりに同級生たちを訪ねる。


そこで、自分の知らない広沢の様々な姿が浮き彫りになる。


そして、最後の最後。自分にとって大きな存在となっていたその人が怪文書を送った張本人だと突き止め、その真意を知った深瀬。ところが、彼はそれ以上の真実を知る。広沢の本当の死因を知ることになるのだ。


自分たちが飲酒を強要する形になって、広沢はビールを口にしたこと。狭く曲がりくねった危険な道だ知っていながら、運転の未熟な広沢を送り出したこと。


それらが広沢の事故に繋がったという「真実」を広沢の両親にも伝え、彼らの怒りを受け止めようと深瀬が決意した矢先。


今度こそ、誰にも言えない深瀬の苦悩が始まる。その事実を知らなかったと言って、許されるのか。。。


ドラマはその先も描かれていたが、深瀬が死に追いやったということでなく、たまたま近くで起きた窃盗事件の犯人と遭遇したことで、体調不良を起こした広沢が放置され死に至ったという描き方だった。


ドラマなりの新たなストーリーを盛り込み、人物と設定は同じながら、別な物語として成立していた。なにより、深瀬以外のゼミ仲間、谷原、浅見、村井のストーリーもしっかり描かれていた。


こういうのが良いなと思う。原作は原作で、書き手の湊かなえさんの「色」があり、ドラマはドラマで、別の色付けがなされる。


ホント、最後の1行は「ザ・湊かなえ」だと思った。全編を通して、深瀬の目線から描かれていることも。。。