今日も徒然、中洲日記

ほどほどに映画が好き。ほどほどに食べることが好き。日々気づいた事を綴ります。

こんな人に会いたい…

年末から人物評伝というか、伝記みたいな小説を続けて読みました。

年末は山形の佐藤久一さんの話。そして、年始は岩手の深沢晟雄さんの話。

どちらも書き手が元々の小説家ではなく、仕事をリタイアした後で、かつて心のどこかに残っていた「人物」を熱い思いで追いかけた作品!!
良かった、読んで…(*^^*)
では、感想を…

『村長ありき 沢内村深沢晟雄の生涯』及川和男(新潮文庫)













現在の私には想像もできない東北の寒村が舞台。その村で生きることを避け、学生時代から村の外に勉学の地を求め、更には時代の流れに乗り、戦争の足音が近づく上海で仕事に就く深沢氏…

そこで目にしたのは中国の人々を「人」として扱うことの無い日本人の姿…

元々反骨精神の塊のような深沢氏はどこに行っても、厳しい現状の打開に必死になる。そして、紆余曲折を経て、その反骨精神はあれほど避けてきた出身地・沢内村でいかんなく発揮され、当時としては誰もが考えられなかった理想的な村の自治を勝ち取る。

と、簡単に粗筋を書くと単なるサクセス・ストーリーのようだけど…

ここに至るまでの深沢氏の熱意が凄い。「理想は理想」なぁ〜んて、知った風な口は絶対にきかない!!

とにかく諦めない…村にとって何が必要か、そのためにはどうしたら良いか…人任せにせず、まず自分で大いに悩む。回りの人々の適性に合わせながら、それらの人々を巻き込んでいく!!

そして、ここが肝心なんだけど…村を良くしていくために行政からだけの一方通行ではなく、村民の目線での意見を出し、村を動かしていかねばならないと村長自らが村民の意識改革に奔走するんだよねぇ(^-^)v

その結果、雪に埋もれていた冬季の交通確保・乳児死亡率0・高齢者並びに乳児の保険適用10割…等々

今の時代なら、次々と導入されてる制度だけど、これが昭和30〜40年に村に導入されたんだよ。驚かされる…医療費が゛タダになるからって無駄に受診するようなバカはいない…それは村長が村民の1人1人の意識教育を徹底したから…

小さな村だから、出来たんだと言う人もいるだろう。それは分からないでもない…でも、国の考えや対応は沢内村を追いかけてるのが現状だよ。

何事にも無関心が今の主流(--;)
関心があるのはごくごく小さな自分の回りの世界。
私にもそんな部分が無いとは言えないよなぁ〜(・・;)

人の上に立つ「人」の持つべき素養を学んだかなぁ。そして、その1人が奮闘する時、大きく物事が動いていくんだと…

絶望的な高い壁に対して、人はどうあるべきか…それが筆者の熱い筆で書かれている。

私の読んだ新潮文庫版はすでに品切絶版。
高齢者医療の問題が注目される現在、沢内の若者達が立ち上がり再版の運動が起きたらしい。その新聞記事を読んで、図書館に予約したんだ。

すでに過去の栄光だと判断したのか、大手版元での再版はならなかったらしい。『れんが書房新社』から新装出版されたそうです(^-^)/