今日も徒然、中洲日記

ほどほどに映画が好き。ほどほどに食べることが好き。日々気づいた事を綴ります。

骸骨ビルの庭(下)


意外に早く下巻が確保されたけど。。。やっぱり、図書館は上下セットの貸出しにしてほしいもんだと改めて思う。


『骸骨ビルの庭(下)』宮本輝(講談社)


以下、感想。。。



































上巻は、戦災孤児達の語りが主で…


下巻も人の「語り」が大きな部分を占めるんだけど、語る内容が違ってた。。。


上巻は子供達の見た「阿部轍正」


下巻は子供達が聞いた阿部轍正の「思い」と間近で見てきた大人達の「阿部轍正」


子供の目には見きれなかった阿部轍正の姿が、間近で見てきた大人達の「語り」で補足されていく。。。


こんな時に「補足」という言葉しか思い浮かばない自分の脳ミソが怨めしい。。。


阿部や茂木泰造が同じように接してきたはずでも、子供達はそれぞれの特性に沿った成長をしていった。


最終的に嘘八百を並べ、目先の欲に飛び付いて、阿部轍正を苦しめた子供も出てきてしまう。。。


哀しいなぁ。。。


でも、世の中ってこうなんだよね。


宮本輝は、私には奇特な人としか映らない「阿部轍正」を淡々と描くなかで、人の「サガ」というか、「気質」というものは、けっして変わらないと強く訴えてる気がする。


だけど、そこに救いは無いのか…といえば。。。


「救い」はある…と。


自分を立ち返らせる「原点」をけっして見失わないこと。


孤児達のなかの1人は、それを見失ってしまった。


子供達は、道を見失った彼女のことを責めるわけでも、突き放すわけでもなく、帰ってくるのを待っている。


結局、彼女は自分の犯した「罪」の重さに気づいて、原点に近づくことさえできなくなる。


それも彼女の「気質」なんだ。


今回の宮本作品は、本当に久しぶりにじっくりとじんわりと心に響く作品だった。


小説の舞台は大阪。。。


あり得ない設定の「お話」なんだけど、舞台が大阪なら…


もしかしたら、現実にこんな物語はあったかもと思えてしまう。。。


「大阪」という街は凄いなぁ。。。


行ったこともない私にさえ、こんなイメージを抱かせるのだから。