同名映画の原作。
感想。。。
良かった。
海炭市に住む普通の人々の、ある日常を描いてる。
そこには、地元の名士や実力者など一切登場しない。
同名映画の公開前に新聞広告がうたれた。
映画の原作としての宣伝文句より、度々「芥川賞」の候補を名を連ねながら、とうとう賞を手にすることなく、若くして自ら命を断った作家としての紹介文句の方が目を引いた。
文筆家や芸術家と言われる人々は、我々とは違う次元で物事を捉えるからこそ、人を感動させる作品を世に送り出せる。
彼らの芸術的表現へのアプローチは私のような凡人に理解しがたい…
佐藤氏なりの思いや正義が彼にその道を選ばせたのだろう。
「天才」と言って、彼の才能を惜しむ人の声に耳を傾けたくなって、手にした。
解説に「海炭市叙景」の最初の執筆予定が語られていた。
元旦から始まった章は冬を。海炭市の四季の情景を4章で季節のうつろいと共に書かれる予定だったとあった。
第1章は、最初のお話がそれぞれのお話の主人公達に語り継がれる形で、春を迎える。
第2章は、町村合併で、新しく海炭市に統合された町に住む人々の日常を描く初夏の情景。
第1章の舞台は海炭市の昔からのつながりが垣間見える。でも、第2章は全く違う。
連作小説として、人のつながりでなく、主人公達と「海炭市」とのつながりが描かれていく。
どの小品も身近な日常に目にするようなお話が多い。佐藤氏が第2章の終了後、世を去ったために、海炭市の本来の厳しい姿を知ることの出来る冬の章と夏から冬へ海炭市の彩り変化を読ませる秋の章を読むことが出来ない。
海が生活に密接し、炭坑が町を発展させた「海炭市」
町のネーミングに佐藤氏の思いが感じられる。
だからこそ、四季を通してその移り変わりを見たかった。