原田芳雄さんの遺作「大鹿村騒動記」の原案小説を読みましたよ!!
「いつか晴れるかな・大鹿村騒動記」延江浩(ポプラ文庫)
以下、感想…
映画と原案小説とは微妙に設定が違います!!
映画は原田芳雄さんの「風祭善」が主人公ですが、小説はどちらかと言えば、映画では善の食堂にバイトに来る「大地雷音」の目線で語られている。
善さんは、そもそも大鹿村には住んでいない!!
あはははは(((^^;)
のどかな大鹿村の風景の中だけで描かれる映画と違い、小説は「のどか」とは対極にある「新宿」と大鹿村の両者が描かれる。
村の歌舞伎を巡る騒動と善さんの身辺に起こる騒動を中心に描く映画に対して、「村」と「人」の繋がりに重点を置いた小説は「騒動記」というほどの騒動は起きず、雷音くんの視点で、過疎の村と最先端の街とが語られていく。
最先端のはずの新宿で生まれ育った雷音くんには、既に身近なところにかつての友人達はおらず、自分の育った家の場所も既に別な建物が建ち、自分の街のはずなのに、自分の居場所が無いように感じられる。
対して、「よそ者」として訪れた大鹿村は、いつの間にか、彼を身内として受け入れている。
雷音くんを大鹿村に案内したのは、彼がバイトする新宿のゲイバーのオーナーである善さん(まず、ここが映画とは大違い!?)なんだけど…
生まれ故郷の村歌舞伎存続のため、ゲイバーで稼いでは村に帰る善さんの日常…
村歌舞伎の主要メンバーは善さんと同い年の仲間達で、子供の頃から変わらぬ繋がりをずっと保ち続ける。
途中、街へ出た者達も村歌舞伎の日には、舞台の前にやって来る。
新宿にあって当たり前の物が何も無い村だけど、本当の豊かさを持っている…雷音くんはそのことに気づく。
雷音くんが初めて村歌舞伎を見る日、新宿にたった1人残っている同級生の「さっちゃん」が子供を連れて、5時間かけて大鹿村までやってくる。
村の良さを認めつつ、自分の育った場所で頑張ってる人達を見て、自らは自分の街・新宿で頑張るんだと雷音くんに宣言をする。
雷音くんのまわりには、素敵な人がいっぱいだ!!
善さんはもちろん、大鹿村の人達、新宿のゲイバーのオカマちゃん、そして、新宿に唯一残っている同級生…
どちらも雷音くんの故郷になり、彼は善さんのように行ったり来たりの生活をするようになる。
300年続いた村歌舞伎。その間、1度として、途切れたことなく、受け継がれてきた村歌舞伎。
東京に出た人をも呼び戻す村歌舞伎。
映画は直接的に歌舞伎シーンもあったので、雰囲気は分かったけれど、そこにある暖かさのようなものは、小説からの方が強く感じ取れたかな…
映画とはちょっと別な大鹿村のお話。
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